教えて!認知症予防〜脳神経外科医篠浦先生に聞く(14)

篠浦伸禎

コラム画像‐3

脳の名医篠浦先生のシリーズコラム第14弾。今回は断食の効能について解説いただきます。

脳にいい断食

では、脳にいい食事というよりは食事をしないという意味になりますが、脳にとっては大変いいことがわかっている断食についてのべます。

断食はやはり歴史が長く、聖書にはモーゼやキリストが断食をしたことが記載されております。また、あらゆるメジャーな宗教はすべて断食をとりいれており、特に有名なのがイスラム教のラマダンです。なぜ宗教で断食を取り入れているかは、修行と言う意味もありますが、やはり脳が活性化することも体験的にいわれています。では、断食により脳に対してどのようないい効果があるのでしょうか。

断食により当然飢餓状態になるのですが、これは脳にとっても大きなストレスになります。このストレスに対する反発力が、脳のしくみを大きく変動させるのです。これが、さまざまな病気や症状を治す力として現れます。以下に断食によりどのような物質が脳に関わり機能をよくするかをのべます。

断食を行うと、脳下垂体からストレスに強く対抗するホルモンたとえばACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が出て脳を活性化します。セロトニンの増加により精神疾患たとえばうつ病に効果があります。BDNF(脳由来神経栄養因子)が増え、新しいニューロンの形成、シナプスの発達、脳内の情報伝達が促進され、認知症やアルツハイマー、加齢による記憶力の低下、パーキンソン病などの予防につながります。

また断食中、脳への栄養素が絶たれると、脳のエネルギーと言われているブドウ糖の代わりに、脂肪が分解してできるケトン体を脳はエネルギー源にします。脳内にケトン体が増えると、α波を出てリラックスしたり、感覚が鋭敏になり集中力がアップします。さらに、糖の他にケトン体というエネルギー源をもつことによって、脳はよりたくさんのエネルギーを得ることができるようになります。そのため、アルツハイマーの予防に効果があるといわれています。最後に、長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子を活性化させ認知症を予防します。このように、さまざまな断食による脳への作用が、脳の活性化、脳の病気の予防や改善につながります。

動物実験でも、断食などの食事制限がいいことが証明されています。一日食事を与えたらその次の日は絶食したラット(ネズミの一種)は、毎日食べさせたラットより長生きをします。マウス(ネズミの一種)による実験でも、お腹いっぱい食べたグループと、食事制限したグループでは、制限したほうがやはり長生きします。

さらに、ラット、ハムスター、マウスを使って、生存率が食事を制限する時期によってどのように変化するかをみた実験があります。その結果、食事制限しないでお腹いっぱい食べたグループが一番早死にし、二番目は一生食事を制限したグループ、次は最初に寿命の三分の一年間は自由に食べその後制限したグループ、もっとも長生きだったグループは、最初の寿命の三分の一年間は食事を制限し、その後自由に食べたクループでした。この結果は、ラット、ハムスター、マウスすべてに共通でした。

この結果を人間にあてはめると、若いころは貧しい食事をして、年を取ると自由に食べるのがいいことになります。まさしく、戦争を経験した世代がそのような食事をしており、もしかしたら彼らがいつまでもかくしゃくとしてボケない人が多いのは食事の要素が大きいかもしれません。

半日断食

では、時間の余裕があり、どこかで指導を受けながら断食できる方は問題ないのですが、忙しい現代人が断食をするのにはどのようにすればいいのでしょうか。

そのひとつのやり方が、半日断食です。半日断食とは、12時間から16時間の間食事をしない、ただしその間野菜ジュースなどは飲んでも問題ないという簡単な断食です。これは、かつて日本人は通常朝は食べずに農作業などをして昼くらいに食べるのが常であり、昔からやっていたことです。私も半日断食を週末を含めて週に4日行っており、体調がいいこと、頭が働きやすくなったことを感じています。