アルツハイマー病の疑いのある人は慣用表現を多用する?

大澤法子

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出典元:pixabay.com

アルツハイマー病患者には様々な言語異常の症状がみられます。今回はアルツハイマー病の疑いのある人には慣用表現の多用がよくみられるとする研究をご紹介します。

アルツハイマー病患者の言語異常

アルツハイマー病を発症すると、記憶に関わる海馬のみならず、言語機能を司る脳領域にも影響が及びます。その結果、さまざまな言語症状が現れ始めます。アルツハイマー病患者に共通して見られる言語上の異常として、アルツハイマー病に関する専門誌『Journal of Alzheimer’s Disease』で指摘されたのが「慣用表現の多用」です。

アルツハイマー病の言語症状のひとつとして慣用表現の多用を挙げたのは、英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の言語・認知研究グループです。

同研究グループは米ピッツバーグ大学の精神科の医師らが運用する「ピッツ・コーパス」(「Dementia Bank」の一部)のデータを分析。独自に開発した言語分析ツール(FLAT)を用いて、慣用表現の多用がアルツハイマー病の疑いのある人とそうでない人を見分けるうえでの指標となり得るかどうかを調べました。ちなみに、FLATとは個々の言語サンプルの定型度を測定するための言語ツールであり、ブリティッシュ・ナショナル・コーパス(BNC)より抽出した共起データを照合し、個々の言語サンプルを比較しながら構築されています。

その結果、「アルツハイマー病の疑いのある人はそうでない人に比べ、慣用表現や共起表現を用いる傾向にあり、これらの表現を多用するかどうかは両者を見分けるうえでの指標となり得る」という結論に至りました。

あくまでもこれは英国人を対象に行われた研究であって、日本人にもそのまま当てはまる特徴であると現時点では言い切れません。とは言え、以前米国人を対象に実施した研究でも同様の結果が出ており、日本人にも当てはまる可能性は高いと言えます。

言語症状からアルツハイマー病を判定できる可能性

以前のnounowの記事(81%の確率で言語症状からアルツハイマー病を判定可能!?)でもふれたとおり、

患者の目の前に絵を提示し、描かれているものを声に出してもらうだけで、意味・統語上の障害、聴覚異常および情報量の問題が明確に表れたことから、アルツハイマー病かどうかの判定材料に十分なり得るという結論に至りました。

さらに注目すべきはその判定精度の高さであり、81%という高い確率でアルツハイマー病かどうかを判定することが可能であるという見解を示しています。

言語を解析することで高い確率でアルツハイマー病を判定できる可能性が示されています。

今回指摘した「慣用表現の多用」は、アルツハイマー病患者に共通して見られる言語症状のごく一部に過ぎません。引き続き、アルツハイマー病患者に特有の言語異常が明確になり、早期の診断につながることが期待されます。

参考論文
Journal of Alzheimer’s Disease. 2016 vol.53 (3):1145-1160
Formulaic Language in People with Probable Alzheimer’s Disease: A Frequency-Based Approach
http://content.iospress.com/articles/journal-of-alzheimers-disease/jad160099