味がよくわからない?認知症では味覚障害が起きる可能性

大塚真紀

tables-253936__340
出典元:pixabay.com

アルツハイマー病患者や軽度認知障害の方は、味覚機能が低下するとする様々な研究をご紹介します。

味覚障害とは

舌には味を感じる細胞があり、甘味、塩辛味、酸味、苦味、うま味の5種類を感知することができます。しかし、年齢や生活習慣、舌や脳の病気、糖尿病や腎臓病、膠原病、ストレスなどによって味を感じなくなってしまうことがあります。味に対して通常のように感じられなくなることを味覚障害とよびます。

味覚障害とひとことで言っても、症状はさまざまです。例えば、食べ物の味が薄くなったように感じる、味を感じない、口の中が常に苦い、甘みだけわからない、食べ物がおいしく感じない、などのように自覚します。

味覚障害の検査法には、ろ紙ディスク法(filter-paper disc method;FPD)と電気味覚検査(electrogustometry;EGM)があります。ろ紙ディスク法は、甘味、苦味、塩味、酸味において各5段階の味サンプルを用意し、舌の上において感度を測定します。電気味覚検査は、小電極から電流を流して味を伝える神経が機能しているかどうか客観的に測定することができます。

味覚障害と認知症

今回紹介する認知症を含め、脳の病気でなぜ味覚障害が生じるのだろうと思う方がいるかもしれません。実は、舌が味を感じた後に電気信号が脳に伝えられて私たちは初めてどのような味か認識しています。そのため、電気信号を受け取る脳や電気信号を伝える神経に異常があった場合にも味覚障害が起きる可能性があるのです。アルツハイマー病では、脳の中の多くの神経が失われることがわかっており、脳の味覚を感じる味覚野とよばれる部分も影響を受けるといわれています。

実際に、ドイツの研究チームから軽度認知障害およびアルツハイマー病患者において甘味、塩辛味、酸味、苦味を感じづらくなっていることが2010年に報告されています。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19727902)

また、東北大学の研究チームが2014年に発表した報告によると、アルツハイマー病患者および血管性認知症患者の両方において、健常者と比較すると味覚に関する認知機能が低下していることが明らかになっています。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24697954)

他の日本の研究チームからも2016年に、アルツハイマー病患者において甘味、塩辛味、苦味を感じづらくなることが報告されています。
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26423603)

このようにアルツハイマー病患者を対象にした臨床研究で、味覚障害を伴うことが明らかになっています。

アルツハイマー病では脳で味覚を感じることができない

日本の研究チームは、アルツハイマー病患者において老化とは関係なく、脳における味覚の処理に問題があることを2016年7月に「Auris, nasus, larynx」誌に発表しました。

今回の研究では、軽度から中等度のアルツハイマー病患者22名(平均年齢 84歳)と認知症のない高齢者49名(平均年齢71歳)を対象に、ろ紙ディスク法(FPD)と電気味覚検査(EGM)を用いて味覚機能を測定しています。

今まで報告されている研究では、FPDあるいはEGMのどちらかの方法でしか検査していないことも多かったので、正確な情報を得られていない可能性もありました。

結果としては、認知症のない高齢者と比較すると、アルツハイマー病患者においてFPDによって測定された味覚機能は明らかに低下していることがわかりました。しかし、EGMでの測定結果は差が認められませんでした。
つまり、味覚を伝達する神経の異常ではなく、脳における味覚処理の機能が減弱している可能性が明らかになりました。

今回の研究で、アルツハイマー病患者において味覚障害を生じる理由が明らかになったといえます。アルツハイマー病や認知症で味覚障害が生じると濃い味を好み、糖尿病や高血圧を引き起こす可能性があります。また、高齢者に対して味覚障害の有無を調べることで、認知症を早期に診断できることができるかもしれません。

今後、高齢者において味覚障害を有する方は認知症を発症するリスクが高いかという視点で多くのヒトを対象とした研究が行われることが期待されます。

<参考論文・参照サイト>
Auris Nasus Larynx. 2016 Jul 11. pii: S0385-8146(16)30197-3. doi: 10.1016/j.anl.2016.06.010.
Taste detection and recognition thresholds in Japanese patients with Alzheimer-type dementia.
Ogawa T, Irikawa N, Yanagisawa D, Shiino A, Tooyama I, Shimizu T.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27427537
http://www.osakadent-dousou.jp/data/rep185_02.pdf#search=’%E5%91%B3%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E3%81%A8%E5%AF%BE%E5%BF%9C’