大気汚染で認知症になりやすくなる?PM2.5に要注意

大塚真紀

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出典元:pixabay.com

PM2.5による体への悪影響についてのいくつかの論文と、PM2.5と認知症発症のリスクについての論文をご紹介します。

PM2.5とは

大気汚染の原因物質として、PM2.5という名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。PM2.5とは直径2.5µm(マイクロメートル)の粒子状物質のことで、PMは粒子状物質を英語にしたParticulate Matterの頭文字をとっています。

PM2.5は、物の燃焼によって直接発生する場合と大気中でさまざまな物質が化学反応を起こすことによって生成される場合があります。例えば、ボイラーや焼却炉、自動車や航空機、海洋や火山の噴煙などから直接発生したり、火力発電や工場、自動車などから燃料の燃焼によって排出される化学物質などが大気中で光やオゾンと反応して生成されたりします

PM2.5が大気汚染物質として問題にされている理由は、粒子の大きさがとても小さいため肺の奥深くに入り込んで体に悪影響を与えるといわれているからです。どれくらい小さいかというと、ヒトの髪の毛が直径約70µm、海岸の砂が約90µmといわれているので比べてみるとよくわかります。PM2.5は、粒径が2.5µmなので髪の毛よりも砂よりもはるかに小さいということです。
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/5.html

PM2.5による体への悪影響

PM2.5はとても小さい粒子なので肺の奥深くに容易に入り込んでしまうため、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器系の症状を起こしやすいと考えられていました。特に小児や高齢者は、PM2.5による悪影響を受けやすいのではないかと心配されています。

一方で、PM2.5による呼吸器以外の体への悪影響に関する報告が世界各国から発表されています。

2015年のアメリカからの研究では、PM2.5にさらされると不安を感じやすくなることを明らかにしており、PM2.5と精神疾患との関連を報告しています。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25810495 

また、同年にイタリアの研究チームから、長期間PM2.5などの大気汚染物質にさらされると心筋梗塞などの心血管疾患の発症リスクが上昇することが報告されています。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24452269 

2016年には、中国の研究チームから、PM2.5に長い期間さらされていると膜性腎症とよばれる腎臓の病気の発症リスクが上昇することが明らかにされています。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27365535 

2015年にアメリカの研究チームは、大気汚染の改善に取り組んだ南カリフォルニア地域において、過去数十年の対策によってPM2.5などの大気汚染物質を大幅に減少させた結果、小児の肺機能の改善を認めたことを報告しています。http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa1414123

PM2.5によって認知症の発症リスクが高くなる原因とは

アメリカの研究チームは、PM2.5を長期間吸い込むことによって脳のサイズが小さくなることを2015年5月に「Stroke」誌に発表しました。

すでに、PM2.5によって認知機能低下が早まることは今回の研究チームとは別のアメリカの研究チームによって2012年に報告されていました。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22332151
しかし、PM2.5が直接脳にどのような異常をもたらすのかという点は明らかになっていませんでした。

今回、研究チームは60歳以上の認知症や脳血管障害のない900名以上を対象に、居住区におけるPM2.5の量と研究参加者の脳のMRI検査結果を解析しました。MRI検査は放射線ではなく磁場を利用して撮影する画像検査で、脳の内部の構造変化を確認したい時に病院で使用されることが多いです。

結果としては、PM2.5の濃度が高い地域の住民は、PM2.5の濃度が高くない地域の住民に比べて、大脳の容積が小さくなっていることが明らかになりました。つまり、大気汚染物質に長期間さらされていると大脳が萎縮するため、認知症を発症するリスクがあがるのではないかということがわかりました。

PM2.5は非常に小さい粒子なので、鼻から吸引して神経を通ってそのまま脳に到達するといわれています。日本においてもPM2.5の濃度が高い地域では、マスクをするなどの対策が推奨されています。
環境省が日本各地のPM2.5の濃度について24時間情報を提供しているサイトがあるので、気になる方は見てみるとよいかもしれません。http://soramame.taiki.go.jp/ 
<参考論文・参考資料>
Stroke. 2015 May;46(5):1161-6. doi: 10.1161/STROKEAHA.114.008348.
Long-term exposure to fine particulate matter, residential proximity to major roads and measures of brain structure.
Wilker EH, Preis SR, Beiser AS, Wolf PA, Au R, Kloog I, Li W, Schwartz J, Koutrakis P, DeCarli C, Seshadri S, Mittleman MA.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25908455