糖尿病と認知症等老年症候群の関係

佐藤洋平

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糖尿病はそれだけでも大変ですが、他の疾患リスク増加とも関連が指摘されています。糖尿病と認知症などの老年症候群との関連を示唆した論文をご紹介します。

糖尿病と老年症候群

年をとると忘れっぽくなったり、歩き方がおぼつかなくなったり尿もれがでてきたりといろんな不都合が出てきますが、英語圏ではこういった加齢に伴う症状をまとめて「老年症候群(geriatric conditions)」と呼ぶそうです。

今回取り上げる論文は、糖尿病がこの老年症候群のそれぞれの症状にどのような影響を与えるかについて過去の研究を取りまとめて調べたものになります。

この論文で取り上げられている老年症候群の症状は
・認知症(アルツハイマー型・脳血管型)
・運動機能の低下
・うつ病
・尿失禁
なのですが、糖尿病があることで認知症の発症リスクはおよそ1.5倍(脳血管型だけであれば2.4倍)になること、認知機能の低下ということであれば、糖尿病患者は実行機能の低下が顕著であるということです。

※実行機能
目的を達成するために、段取り良くしっかりと計画を立てて何かをするための統括的な能力。

加えて運動機能の低下というところでは転倒リスクが高まるようで、糖尿病患者の女性の転倒リスクはおよそ1.2倍になること、うつ病は有意差は示されなかったものの、合併症がある場合なりやすくなること、さらに尿失禁のリスクもおよそ1.2倍になることが示されています。

一つだけでも大変なのに、いろんなものが積み重なってくる老年というのは中々に大変なのだろうなあと思いました。

論文要旨

・背景
先行研究においては、糖尿病と様々な老年症候群(すなわち、認知障害、認知症、うつ病、運動障害、障害、転倒、および尿失禁)のリスクとの関連を示唆している。しかしながら高齢者に対する糖尿病の程度と影響について概観されたものはない。

・結果
15の研究では、糖尿病と認知機能不全との関連が検討された。

糖尿病は高齢者の認知機能の低下が早かったことと関連していた。

糖尿病を有する人と参加しなかった人とを比較した場合の、すべての認知症のプールされた調整リスク比(RR)は、1.47(95%CI、1.25〜1.73)であった。

アルツハイマー病および血管性認知症の患者と糖尿病を比較するRRは、それぞれ1.39(CI、1.16-1.66)および2.38(CI、1.79-3.18)であった。

5つの研究のうちの4つが、より速い運動性低下と何らかの受傷機転による障害と糖尿病の有意な関連を見出した。

2つの研究で、糖尿病と高齢女性の転倒との関連性が検討された。両方とも統計的に有意な関連性を見出した。

インスリン使用者は再発転帰のRRが高かった。

高齢女性の尿失禁に関する1件の研究では、統計的に有意な関連性が認められた。

うつ病の2つの研究は、糖尿病がうつ病の独立した予測因子であるとは示唆しなかった。

・結論
現在の証拠によれば、糖尿病は選択された老人性疾患のリスク増加と関連している。臨床医は意識を高め、適切なケアを提供すべきである。根底にある病理学的経路を解明するためには、今後の研究が必要である。

http://journals.plos.org/plosone/article…
PLoS ONE. 2009; 4(1): e4144.
Published online 2009 Jan 7. doi: 10.1371/journal.pone.0004144
PMCID: PMC2607544
Diabetes and the Risk of Multi-System Aging Phenotypes: A Systematic Review and Meta-Analysis
Feng-Ping Lu,1,2 Kun-Pei Lin,1,3 and Hsu-Ko Kuo1,4,5,*
Cuilin Zhang, Editor
コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション