教育歴と認知症の関係

佐藤洋平

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若い頃の学習、教育歴が認知症発症率に影響するとよくいわれます。メキシコで行われた7,000人の高齢者の教育歴と認知症の関連を調べた大規模な研究をご紹介します。

メキシコの認知症調査に見る教育の重要性

認知症は歳を取ってある日突然になるようなものではなく、若い頃からの生活の積み重ねで出て来る一生ものの病気とも言われるのですが、果たして若い頃の勉強、教育歴は認知症の発症にどの程度影響を与えるものなのでしょうか。

今回取り上げる論文はメキシコに住む7000人の高齢者を対象にした大規模調査についてのものです。

この研究で面白いと思った点が二つあるのですが、一つは評価方法に実行機能の程度を強く盛り込んでいるところです。

認知症というのは単に物忘れが進むだけでなく、日常生活に付随するいろんなことをやり行う能力が低くなってしまいます。

家事は結構な認知機能を動員すると思うのですが、例えば台所に立って違う料理を3品同時進行で作るのは認知機能が落ちてくると難しいですし、洋裁ができたとしても、布を選んで買って計画して仕上げるというのは、単に手を動かす以上に認知機能が求められます。

こういった何かを計画立ててやり遂げる力のことを実行機能というのですが、この研究ではこの実行機能がどれ位障害されているかをきちんと調べている点が興味深いです。

またもう一つ興味深かったのはメキシコにおける教育歴が認知症に与える程度で、メキシコでは経済格差が大きく、貧困による教育格差が高齢者ほど大きいようです。

教育歴に乏しい高齢者はそうでない高齢者と比べて1.5倍認知症になりやすいことが示されています。

若い頃の教育で認知症になりにくくなる背景として、若い頃の脳への負担で神経回路がより頑強なものになるからではないかということが仮説的に言われていますが、若い頃の脳への負荷は色んな形で一生涯影響してくるのかなあと思いました。

論文要旨

・目的
メキシコの人口における認知症と認知障害を有する非認知症の有病率および発症率を推定すること。

・方法
MHAS調査は、全国で800万人の被験者を代表する7,000人の高齢者を対象にした、メキシコの健康と老化に関する将来のパネル調査である。認知症の症例およびCIND(認知障害を有する非認知症者)の日常生活の認知および活動の測定値をベースラインおよびフォローアップで同定した。性別、年齢、および教育の全発生率および特定の割合を計算した。

・結果
認知症とCINDの有病率はそれぞれ6.1%と28.7%であった。発生率は、認知症については1,000人年当たり27.3人であり、CINDについては1,000人あたり223人であった。認知症とCINDの割合は、年齢が進むにつれて増加し、高等教育レベルで減少した。性別は年齢層によって差異があった。高血圧、糖尿病およびうつ病は認知症の危険因子であったが、CINDのリスク因子ではなかった。

・結論
これらのデータはメキシコ人集団における認知症および認知障害の有病率および発生率の推定し将来の負担予測をするものである。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3557523/
J Aging Health. Author manuscript; available in PMC 2013 Jan 28.
Published in final edited form as:
J Aging Health. 2011 Oct; 23(7): 1050–1074.
doi: 10.1177/0898264311421199
PMCID: PMC3557523
NIHMSID: NIHMS424244
Prevalence and Incidence Rates of Dementia and Cognitive Impairment No Dementia in the Mexican Population
Data from the Mexican Health and Aging Study
Silvia Mejia-Arango, PhD and Luis Miguel Gutierrez, PhD

コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション