コレステロール値と認知症は無関係?

佐藤洋平

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悪者扱いされがちなコレステロール値と認知症との関連を調べた長期にわたる大規模調査をご紹介します。

コレステロール値と認知症の意外な研究結果

コレステロール値が高いというと何が何でも体に悪いというイメージがありますが、果たしてこれは認知症にも言えることなのでしょうか。

今回取り上げる論文は、コレステロール値が高いことが認知症と直接関係しないのではないか、それよりコレステロール値が下がることのほうがよほどリスクが高いのではないかということを示したものです。

この研究はスウェーデンに住む38歳から60歳の1462名の女性を対象に行なったもので、32年間に渡り追跡調査を行ってコレステロール値と認知症の関係を調べたものです。

結論を述べると、調査開始時、調査の全期間生き残った人たちを対象にコレステロール値が高い上位4分の1の人達を中央値の人たちと比べた場合、コレステロール値と認知症の発症率に変化はありませんでした。

そして驚くべきことに、コレステロール値が中年期から人生終末期にかけて下がった人たちの方が認知症の発症リスクを2倍以上(HR 2.35,95%CI 1.22-4.58)押し上げることが示されています。

体内のコレステロールの約3分の1が、実は脳に存在しているそうで、またその殆どが脳の神経線維を包んで髄鞘に含まれているそうです。

この髄鞘というのは,神経細胞同士の高速で効率的な情報伝達を可能にするようなものなのですが、果たしてコレステロールの低下がこの髄鞘の変性と関係してるのかどうか、また仮に髄鞘の変性と関係しているのなら、変性が進行してコレステロールが下がるのか、あるいはコレステロールが下がって髄鞘が変性するのか。
果たしてどっちなんだろうと思いました。

論文要旨

・背景
細胞および動物研究からは、高コレステロール血症がアルツハイマー病(AD)に寄与することが示唆されている。しかし、集団レベルでのコレステロールと認知症との関係はあまり明確でなく、寿命にわたって変化する可能性がある。

・方法
対象は38-60歳の認知症のない女性1,462人であり、スウェーデンのイェーテボリで1968-1969年に開始された。

フォローアップは、1974-1975年、1980-1981年、1992-1993年、および2000-2001年に実施された。

すべての原因の認知症は、神経学的およびコミュニケーション障害の国立研究所および脳卒中 – アルツハイマー病および関連障害協会基準に従って、DSM-III-R基準およびADに従って診断された。

Cox比例ハザード回帰は、ベースライン、時間依存性、およびすべての参加者の間での認知症およびADの関連におけるコレステロールレベルの変化を調べた。

70歳以上の生存者と2000-2001試験に参加した参加者の間で分析を繰り返した。

・結果
1968年の高コレステロール値は、2000-2001に生存して参加した人々のうち、ADのリスク増加と関連していなかった(最も高い四分位数:最低危険率[HR] 2.82,95%信頼区間[CI] 0.94-8.43)。

32年以上の参加者を対象にした場合、コレステロールレベルと認知症との間には関連性はなかったが、フォローアップでコレステロールが減少したものは認知症リスクの増加と関連していた(HR 2.35,95%CI 1.22-4.58)。

・結論
これらのデータは、中年のコレステロール値がADのリスク上昇と関連していないことを示唆している。

しかし、認知症のリスクのある年齢まで生存している人々の間には、わずかなリスクが存在する可能性がある。

中年から終末期までのコレステロール値の低下は、認知症発症前のある時点で得られたレベルよりもアルツハイマー病のリスクをよりよく予測することができる。

他のリスク要因を加えて調査した場合、結果の解釈に影響を与える可能性がある。

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Neurology. 2010 Nov 23; 75(21): 1888–1895.
doi: 10.1212/WNL.0b013e3181feb2bf
PMCID: PMC2995387
The 32-year relationship between cholesterol and dementia from midlife to late life(e Pub ahead of print)
M.M. Mielke, PhD, P.P. Zandi, PhD, H. Shao, MS, M. Waern, MD, PhD, S. Östling, MD, PhD, X. Guo, MD, PhD, C. Björkelund, MD, PhD, L. Lissner, PhD, I. Skoog, MD, PhD, and D.R. Gustafson, PhD

コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション