犬との触れ合いが認知症の症状を改善させるってホント!?

大塚真紀

犬との触れ合いがアルツハイマーに効く(イメージ)
出典元:pixabay.com

動物を飼うことには様々なよい効果があり、世界各国で医療現場に動物介在療法が取り入れられています。では動物介在療法は認知症にも効くのでしょうか?

動物介在療法とは

動物を飼うことによる人間へのよい効果としては、身体的効果、精神的効果、社会的効果があるといわれています。動物を抱いたり、なでたり、話しかけたり、必要な場合は散歩に出かけたりすることで日常生活動作が増え、リハビリとしての身体的効果を期待できます。また、1人でいるよりも言葉を使うようになるという効果もあります。

動物をかわいいと思ったり、自分が必要とされていると思えることで気持ちが落ち着いたり、悲しみやストレスを緩和する精神的効果を期待できます。動物と接すると笑顔が増えるというのは想像しやすいかと思います。また、動物を介して他人とコミュニケーションをとりやすくなったりすることで社会活動が増し、社会的効果を期待できます。

動物介在療法とは、医療現場で動物との触れ合いを通して患者の心や体の機能の改善、社会活動性の向上などを目的として治療の一環として行われるものを指します。

世界各国では、医療現場で積極的に動物介在療法を治療の1つとして取り入れており、認知症やうつ病、自閉症、末期がんの患者に対する治療効果が証明されています。病気の症状の改善だけでなく、末期がんで不安や悲しみの中にある患者の心の支えになるということが明らかになっています。

日本での動物介在療法

一方、日本では動物介在療法はなかなか普及しづらい状況です。その理由はいくつかあるのですが、まず厚生労働省が認可していないので保険が効かないということが挙げられます。また、動物は細菌を持っていて汚いのではないか、暴れて治療の機械や患者に危害を加えないかなど、慎重な日本人の国民性もあり、心配が先に来てしまうことが多いようです。

日本では、小児がんで入院していた少女が犬に会いたいと願っていたのに会えずに亡くなってしまったことをきっかけに、2003年聖路加国際病院で初めて動物介在療法が導入されました。

聖路加国際病院では導入後10年以上が経過していますが、セラピー犬によってトラブルが起こったことはなく、患者にとって有益だと判断しています。もちろん動物介在療法を行う時のセラピー犬に対しては、必要なワクチンを接種し、感染や衛生上の問題がないことを確認した上で患者に接するようにしています。

アルツハイマー病の症状に対する動物介在療法の効果

イタリアの研究チームは、軽度から中等度のアルツハイマー病の患者に対し6か月間、犬を用いた動物介在療法を行い、アルツハイマー病に伴う認知機能障害が改善することを2015年9月に「Psychogeriatrics」誌に発表しました。

アルツハイマーセンターで2013年1月から6月までの6か月間、症状が軽度から中等度のアルツハイマー病患者に対し、週に1回45分の動物介在療法か従来の治療法であるリアリティ・オリエンテーション法を行いました。リアリティ・オリエンテーション法とは、時間や場所、人に対する見当識障害がある認知症の患者に対して行われる治療法で、繰り返し基本的情報(時間、場所、年齢、名前など)を質問して自分の状況について確認できるように訓練します。

動物介在療法では、従来のリアリティ・オリエンテーション法に7歳メスのラブラドールレトリバーを使用し、犬の情報(名前や種類、年齢、性別)などを思い出させたり、犬と遊んだり世話をした後に、その日に行った犬との触れ合いに対する感想などを話すような訓練をしました。

患者のうち20人は動物介在療法、20人は従来のリアリティ・オリエンテーション法、10人は治療介入を何もしないように割り振り、研究の開始時と終了時にGDS (高齢者用うつ尺度短縮版)とMMSE(ミニメンタルステート検査)とよばれる高齢者うつの程度と認知症の症状を客観的に判断するための質問を行い、点数が変化するかどうかを見ました。

結果としては、動物介在療法とリアリティ・オリエンテーション法を行った両グループにおいて、感情障害と認知機能で改善を認めました。また、全てのグループで比較したところ、動物介在療法を受けたグループにおいて感情障害と認知機能障害が最も改善したことが明らかになりました。

動物介在療法を従来のリアリティ・オリエンテーション法に組み込み、より効果を認めたという結果は今回の研究が初めてであり、動物介在療法の実用性を示した点で貴重な報告であると考えられます。

しかし今回の研究で解析対象となっている患者が合計50人と小規模で、症状が軽度から中等度と限定されているので、今後はより多い人数を対象として、アルツハイマー病の重症度によって効果の違いがあるかどうかを検証することが期待されています。

(参考論文・参考資料)
Psychogeriatrics. 2015 Sep 15.
Evaluation of the efficacy of animal-assisted therapy based on the reality orientation therapy protocol in Alzheimer’s disease patients: a pilot study.
Menna LF, Santaniello A, Gerardi F, Di Maggio A