知的活動は認知症の予防になる

大塚真紀

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知的活動というと幅広い概念になりますが、ゲームや工芸、コンピュータの使用、社会活動などが認知機能にどのような影響を与えるかを調査した研究をご紹介します。

知的活動の体への影響

知的活動とは、頭を使って行う活動すべてをさします。例えば、ダンス、将棋、ゲーム、絵を描くような芸術活動、歌うことなどが挙げられます。

知的活動を行うことの心身への良い効果は今まで多くの研究で明らかにされています。例えば、音楽を聴く、歌う、音楽に合わせて踊るという活動は精神的に障害を抱えている方や認知症の方に対して症状の改善に良いといわれており、音楽療法として治療の1つと捉えている施設もあります。

また、知的活動を通して友人ができることや、社会とのつながりができることも心身へ良い影響を与えると考えられています。

高齢者における知的活動

認知症の予防に関しては、ビタミンやポリフェノール、牛乳、和食などの食事や栄養素から運動、睡眠など多くの研究が行われています。残念ながら、現時点で認知症を治す画期的な薬がないため、予防が大切だと考えられているからです。

高齢者における知的活動が認知症やアルツハイマー病の予防になることはすでにいくつかの研究で明らかにされており、nounowでもすでに紹介してきました。例えば、楽器を演奏する人はしない人に比べて認知症になる確率が64%も低くなります(楽器を演奏すると認知症予防になる)。

また、中年期に芸術や工芸などの活動を行っていた人は認知機能障害を発症する可能性が低くなり、コンピューターを使用している人も記憶障害を起こすリスクが低くなることがわかっています。(絵を描くことは認知症予防になる)。

知的活動を行うことによって、人や社会とのつながりができる点が認知症の予防によいのではないかともいわれています。実際に、孤独であると感じている人や生きがいがないと感じている人は認知症を発症しやすいことがわかっています(生きがいがないと認知症になりやすい)。

知的活動を続けることは認知症予防になる

アメリカの研究チームは、高齢者を対象にした研究で知的活動が認知症の予防になることを2017年1月に「JAMA Neurology」誌に発表しました。

研究チームは、認知障害のない70歳以上の高齢者1929名を対象に毎日行っている知的活動に関する質問を行い、その活動を継続しているかどうかも確認しました。研究対象となった参加者の平均年齢は77歳で、観察期間は約4年間でした。知的活動としては、ゲーム、工芸、コンピューターの使用、社会活動を検討し、認知障害に関しては認知機能に関するテストを行い評価しました。

観察期間中に軽度認知症を発症したのは約1/4でしたが、知的活動を継続して行っている方においては認知症の発症リスクが低下することがわかりました。特にコンピューターを使用している高齢者において認知症の発症リスクが低く、次に工芸作業が続きました。具体的には、認知症の発症リスクをコンピューターの使用は30%、工芸作業は28%、社会活動は23%、ゲームは22%それぞれ低下させることが明らかになりました。

研究チームは、アルツハイマー病の発症リスクが高いとされるAPOEε4遺伝子の有無も検討しており、遺伝的にアルツハイマー病のリスクが高く知的活動も行っていない場合には認知症の発症リスクが1.74倍になることがわかりました。

今回の研究から、知的活動を継続的に行うことは認知症の予防になる可能性が明らかになりました。今回は、4つの活動を知的活動と定義して比較している点が興味深いですが、今後は音楽や運動なども含めた研究が行われることが期待されます。

<参照サイト・参考論文>
1) JAMA Neurol. 2017 Jan 30. doi: 10.1001/jamaneurol.2016.3822. [Epub ahead of print] Association Between Mentally Stimulating Activities in Late Life and the Outcome of Incident Mild Cognitive Impairment, With an Analysis of the APOE ε4 Genotype.
Krell-Roesch J, Vemuri P, Pink A, Roberts RO, Stokin GB, Mielke MM, Christianson TJ, Knopman DS, Petersen RC, Kremers WK, Geda YE.