牛乳がアルツハイマー病を予防する可能性

大塚真紀

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出典元:pixabay.com

認知症予防によいとされる地中海料理では牛乳や乳製品は控えめが推奨されています。一方、日本の久山町研究では逆の研究結果が。。

牛乳は栄養価の高い飲み物

牛乳や乳製品と聞くと、まずカルシウムが多いと思い浮かぶ人も多いかもしれません。しかし、牛乳にはカルシウムだけでなく、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれていることがわかっています。

また、牛乳のタンパク質と知られるカゼインは、体の中で分解されるとカゼインホスホペプチドになりミネラルと結びつきやすくなるといわれています。例えば、レバーや大豆、プルーンなどに含まれる鉄分は吸収率があまりよくないことが知られていますが、牛乳と一緒に摂取すればカゼインホスホペプチドによって吸収率が上がる可能性があります。
(出典:株式会社明治HP http://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/know_milk/01/

牛乳と認知症の関係とは

牛乳の健康効果に関しては、今まで多くの研究がなされています。例えば免疫や内分泌などに作用し、病気の予防に関わることがわかっています。牛乳や乳製品と認知症の発症リスクに関する研究報告もあります。

欧米では牛乳を摂取することは認知症の発症リスクを上げるのではないかといわれています。nounowでも紹介しましたが、認知症の予防効果があるとされる地中海食(くるみ入り地中海食が、認知機能低下を防ぐ!)では牛乳や乳製品を控えることが勧められています。地中海食は、主食である穀物、果物や野菜、豆類、魚介類、チーズ、オリーブオイルなどで構成されています。また、牛乳や乳製品、アイスクリームなどの高脂肪のものではなく、低脂肪乳を摂取した方が認知症の発症リスクを抑えられることが報告されています。

一方で、以前nounowでも取り上げましたが(“日本人の食習慣”と、認知症発症リスクとの関係は?)、日本からの報告では毎日牛乳を摂取している方が認知症の発症リスクが低いことが明らかにされています。今回紹介する報告は久山町研究の1つで、牛乳と認知症の発症リスクを検討した日本における長期にわたる観察研究です。

アルツハイマー病予防には牛乳を飲むとよいとする研究

日本の研究チームは、牛乳や乳製品を摂取するとアルツハイマー病の発症リスクが低下することを2014年6月10日に「Journal of the American Geriatrics Society」誌に発表しました。

研究チームは、久山町の住民で60歳以上の認知症ではない1081名を対象に行われました。牛乳と乳製品の摂取量は、どのような食事をどれくらい摂取しているかという質問票に基づいて調査しました。牛乳と乳製品の摂取量により研究対象者を4つのグループに分け、認知症全体、アルツハイマー病、血管性認知症の発症リスクを検討しました。観察期間は17年以上でした。

観察期間において、303例が認知症を発症し、アルツハイマー病は166例、血管性認知症は98例でした。年齢と性別で調整して解析すると、牛乳と乳製品の摂取量増加に伴い、認知症全体、アルツハイマー病、血管性認知症すべてにおいて発症リスクが低下していることがわかりました。

また、その他の認知症発症に関連する要因を調整して解析すると、牛乳や乳製品の摂取量増加はアルツハイマー病の発症率を低下させることが明らかになりました。また4つのグループで比較すると、牛乳や乳製品の摂取量が最も少ないグループに比べると、他のグループにおいてアルツハイマー病の発症リスクが低いことがわかりました。

今回の研究では、日本人においては牛乳や乳製品を摂取している方がアルツハイマー病の発症リスクを低下させるということが明らかになりました。欧米の結果と相反する結果が日本で出たことの理由として、日本人の乳製品の摂取量は欧米人に比べて約半分であることが挙げられると研究チームは指摘しています。そもそも日本人においては牛乳や乳製品の摂取量が少ないため、多めに摂っている人の方が認知症の発症リスクを低下させることができたのではないかという考えです。

今回の研究報告は、17年以上という長期間にわたる日本人のデータなので大変貴重な結果といえます。しかし、今回の研究は質問票による牛乳や乳製品の摂取量調査であったこと、研究期間中に1回しか質問票で調査していないこと、などがあり、真の摂取量を反映していない可能性があります。

今回取り上げた研究からは、牛乳や乳製品に関して、あまり摂っていない方は摂るように心がけ、すでに摂るようにしている方はそのまま継続するとよいといえます。

<参考論文・参考資料>
J Am Geriatr Soc. 2014 Jul;62(7):1224-30. doi: 10.1111/jgs.12887. Epub 2014 Jun 10.
Milk and dairy consumption and risk of dementia in an elderly Japanese population: the Hisayama Study.
Ozawa M, Ohara T, Ninomiya T, Hata J, Yoshida D, Mukai N, Nagata M, Uchida K, Shirota T, Kitazono T, Kiyohara Y.
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