脳の中のフィルタリング機能

佐藤洋平

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出典元:pixabay.com

我々が生活に支障ない形で外部世界を適切に認識できるのはなぜなのでしょうか?脳の中の情報センターである視床、その中でも視覚情報処理に重要な視床枕と呼ばれる領域が不要な情報をフィルタリングしているとする論文をご紹介します。

なぜ私たちは世界を認識できるのか

普段当たり前のように生活しているこの世界ですが、実はこの世界に含まれる情報は膨大であり、なにもパソコンの中を覗き込まなくても、よくよく考えてみれば現実世界は凄まじい情報の海と捉えることができます。

にも関わらず私達は何の苦もなくこの情報カオスの中で普通に歯ブラシに手を伸ばし、普通にキャッチボールができたりしますが、これは脳科学的にはどのような仕組みによるものなのでしょうか。

一般に何かを注意するときには二つの仕組みがあることが知られています。

一つはトップダウン的注意で、これはキャッチボールであれば、ボールが飛んで来る前から「ボール、ボール、ボール、、、」とボールのことを意識して前倒し的にボールに注意を向けるようなものになります。

もう一つはボトムアップ的注意で、これは蜘蛛や蛇、汚物など、ちょっとやばそうなものを自動検出して意識させるような注意になります。

この前者のトップダウン的注意に関わる脳の仕組みとして、前頭前野と頭頂葉をつなぐようなネットワークがあり、これは前頭頭頂注意ネットワークとも呼ばれています。

今回取り上げる論文は、脳の中の情報センターである視床、その中でも視覚情報処理に重要な視床枕と呼ばれる領域と注意の関係について調べたものです。

結論を述べると、この視床枕は前述の前頭頭頂注意ネットワークと結びつき、トップダウン的な注意に働くこと、
具体的には目から入った情報の内、必要な情報だけを脳に伝えて、不必要な情報をはじくようなフィルタリングにあたるような役割があることが示されています。

私達が大事な情報だけを意識でき作業できるのは、こういった視床枕なり前頭頭頂注意ネットワークのおかげなのかなと思いました。

論文要旨

視床にある視床枕は視覚的注意に重要な役割を果たすと考えられており、視覚野や前頭頭頂注意ネットワークへ広範な接続を持っていることが知られている。

しかしながら視床枕特有の機能については未だ意見の一致を見ていない。

本研究では視床枕が注意対象の弁別に機能しているという仮説のもと、機能的MRIを用いて注意課題を行っているときの脳活動について調査を行った。

結果,視床枕は注意すべき対象を読み込むが、そうでない対象については正確に読み込まないことが示された。
これらのことから視床枕は不要な刺激をフィルタリングしていることが考えられた。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3576929/
Nat Commun. Author manuscript; available in PMC 2013 Feb 20.
Published in final edited form as:
Nat Commun. 2012; 3: 1051.
doi: 10.1038/ncomms2054
PMCID: PMC3576929
NIHMSID: NIHMS425629
Attention gates visual coding in the human pulvinar
Jason Fischer* and David Whitney

コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション