匂いの脳科学

佐藤洋平

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出典元:pixabay.com

匂いの強い・弱いとその質が脳のどの領域の活動と関連しているかについて示唆した論文をご紹介します。

その香水は妥当か?匂いと報酬の脳科学

年末の時期,いろいろと外に出て人に合う機会も増えると思います。

外に出て人に会うにあたって、女性や男性も香水を使う人はそれなりにいると思うのですが、脳科学的には香水はどのようなものをどれ位かけるのが効果的なのでしょうか。

今回取り上げる論文は、匂いの質と強さと脳システムについて調べたものです。

脳の中には好き嫌いの感情に関わる報酬系と呼ばれるシステムがあります。

これは脳の中の原始的な部分と、ヒトに進化して獲得した新しい部分がつながってできているシステムなのですが、この研究では匂いの質が低い(臭い)/高い(いい匂い),匂いの量(香水だったらふりかけた量?)が弱い/強いのマトリックスで、匂いの質と量を操作して、その時の脳活動について詳しく調べています。

つまりは(臭くて弱い)、(臭くて強い)、(香りよく弱い)、(香りよく強い)の4条件でこれを嗅いだ時の脳活動を調べているのですが、

結論を述べると脳の中でも原始的な部分である扁桃体と呼ばれる部分はいい匂いだろうと悪い匂いだろうと、匂いの強さ(香水で言えばふりかけた量)に反応し、

脳の中でも進化的に新しい部分である前頭眼窩野と呼ばれる部分は、匂いの強い弱いとは関係なく、それがいい匂いか悪い匂いかに反応することが述べられています。

ただ問題は匂いの質を判断する脳の中の新しい部位、前頭眼窩野で、ここは原始脳のように強いか弱いかという絶対的な判断ではなく、置かれた状況で,その匂いを良いととるか悪いととるかが変わってくるそうです(和食の席で隣でブルガリの香水の匂いがしたらあんまりうれしくない)。
こんな実験結果を見ると量はさておき、香水というのはつけるその人ではなく、その場所に合わせて選ぶものなのかなと思いました。

論文要旨

感情的経験は、強度と価数という2つの主要な次元の観点から説明される。

人間の脳においては、視覚刺激の感情次元のこれら二つに対応する神経活動を解離することは本質的に困難であるが、嗅覚においては比較的容易に行うことができる。

今回機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)を用いた実験を行い、扁桃体の活性化が臭いの価数ではなく強度に関連することが示された。

対照的に、前頭眼窩野における活性は、強度とは無関係に価数と関連していた。

これらの知見は、別個の嗅覚領域が、嗅覚刺激の程度と質の分析に従属することを示している。

Nat Neurosci. 2003 Feb;6(2):196-202.
Dissociated neural representations of intensity and valence in human olfaction.
Anderson AK1, Christoff K, Stappen I, Panitz D, Ghahremani DG, Glover G, Gabrieli JD, Sobel N.
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コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション