長生きの秘訣は幸せを「かみしめる」こと

工樂真澄

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出典元:pixabay.com

今日はまず、次の質問に答えてみてください。
「いろいろあったけど、トータルでみれば幸せな人生をおくってきた」
0:全くそう思わない
1:少しだけそう思う
2:まあまあそう思う
3:まったくその通りだと思う
この質問に3と答えた方は、「長生き予備軍」と言えるかもしれません。今回は、主観的な幸福感と寿命の関連を調べた論文をご紹介します。

幸福感と死亡率の関係

2016年、イギリスのロンドン大学のZaninotto博士らは、自分が幸福だと感じている年数が長ければ長いほど、死亡率が低くなるという報告をしました。

調査対象者はイギリスに住む50歳以上の男女(平均年齢63歳)9365人です。「幸福感と死亡率には関連性がある」という報告は以前からありましたが、「幸福だと感じている年数の違い」に関する研究はありませんでした。そこで博士らは、2年ごとに3回にわたって「幸福感や満足感」に関する聞き取り調査を行い、その結果と死亡率との関連を調べました。聞き取り調査では、この記事の冒頭の質問に加えて、さらに次の3つの質問に0から3の数値で答えてもらいました。「自分の行っていることが楽しい」、「他人とつきあうのが楽しい」、「最近とても元気だ」。

3回の聞き取り調査を受けた中で、調査開始から11年後に死亡していたのは1310人でした。生前の調査の結果よってその方たちをグループ分けしたところ、亡くなった方で最も多かったのは、3回の調査全てで「幸福感や満足感に乏しい」と答えたグループでした(30%)。統計処理の結果、幸福感を強く長く感じているほど死亡率は低く、最も「幸福度」の高いグループの死亡率は、最も幸福度の低いグループよりも24%少ないという結果が出ました。性別や年齢、学歴や経済事情、健康状態など、幸福感に関係しそうな要素を考慮して統計解析を行いましたが、「幸せだと感じている期間が長いほど、死亡率は減る」という結果は、変わりませんでした。

幸せだと感じることが一番の健康法

幸福感が続くと死亡率が低くなるメカニズムについて、論文では以下のように推論しています。

皆さんもストレスが免疫力に影響することは、お聞きになったことがあるかもしれません。ストレス反応で分泌が増加する「コルチゾール」というホルモンは、免疫反応の初期に必要な物質の合成や分泌を抑えてしまい、正常な免疫反応を妨げることが知られています。

心から「幸せ」だと言えるということは、ストレスになる要因がないか、またはあったとしてもそれをストレスだとは感じていないということでしょう。イライラすることがなければ、たとえばタバコや深酒、コーヒーの飲み過ぎなどで、ストレス発散をする必要がありません。「幸せ気分」が早寝早起きや運動、バランスの良い食事、さらには積極的に健診や治療を行うなど、基本的な生活習慣に気を配る「心の余裕」を生み出すからではないか、と論文では述べられています。

現実はどうであれ「幸せ」と長く思えるかどうかが大事

「幸せ」とは主観的なものです。幸せだと感じるかどうかは人それぞれで、たとえ裕福であっても毎日が退屈で面白くないという人もいるでしょうし、少々お金には不自由していても好きなことに挑戦している若者は、とても幸せだと感じているのではないでしょうか。そう考えると、「どうやったら幸せになれるのか」といった幸せ探しをするよりも、「自分は幸せだ」と日々思い込むことに心を費やすほうが、結局のところ長生きにつながるのかもしれません。

今回ご紹介した論文
Sustained enjoyment of life and mortality at older ages: analysis of the English Longitudinal Study of Ageing.
Zaninotto P, Wardle J, Steptoe A. BMJ. 2016 Dec 13;355:i6267.

参照文献
「脳とホルモンの行動学」近藤保彦 他編 西村書店