脳科学的な不安感の克服の仕方

佐藤洋平

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適度な恐怖感や不安感のおかげで生存してこれたといわれる我々人類ですが、それらが過剰になると様々な支障がでてきます。恐怖表情や幸福表情を見ている時の脳活動について調査した研究をご紹介し、不安感の手なづけ方について考察してみます。

臆病だから生き残ってきたけれど。。

世の中には進化心理学といった名前の学問分野があり、その分野の本を読むと我々人類の多くは臆病者の子孫ではないかということが書いてあります。

恐怖や不安というのはしばしばネガティブな文脈で語られがちです。恐怖や不安を感じることでリスクを回避し、生存確率を上げることができる、それゆえ臆病遺伝子を持つ地味な人類が長期的に勝ち残ってきた、そんな話だと思います。

この恐怖や不安というのも適量であれば生存確率を上げることができますが、これが過剰であれば機能錯誤をおこしてかえって生存を不利にしてしまうこともあるかもしれません。

こういった恐怖感や不安感に対処するために、臨床心理学の分野では暴露療法というものがあるそうです。
これは不安や恐怖の対象に,少しずつ慣れることで心の興奮を鳴らしていくようなものですが、こういった仕組みは脳科学的にはどのように説明され得るのでしょうか。

今日取り上げる論文は,恐怖表情や幸福表情を見ている時の脳活動について機能的MRIを用いて調べたものです。

扁桃体の手なづけ方

実験では恐怖表情や幸福表情を被験者に見せ、その時の脳活動を調べているのですが、結論を述べると

①恐怖表情を見ることで、脳の中の情動中枢である扁桃体後部の活動が増大する
②しかし繰り返し恐怖表情を見せることで、この扁桃体の活動は急速に減弱していく
③恐怖表情だけでなく、幸福表情にも扁桃体が反応することから、扁桃体は以前から言われているような恐怖・不安情報以外の何らかの感情価を持つ情報全般に反応している可能性がある

ということが述べられています。

不安に徐々に慣れさせていくというのは、扁桃体の活動をうまく手懐けていくということなのかなと思いました。

論文要旨

今回,機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)を用いて、恐怖、幸福、および中立的な顔の視覚的提示の間に扁桃体活動がどのように変化するかについてヒトを対象に実験を行った。

第一実験と第二実験を行い、前者では固定的な順序で視覚提示を行い、後者では刺激の順序で差が出ないよう順序を調整して視覚提示を行った。

両方の実験において、扁桃体は、恐怖表情に応答して優先的に活性化された。

第二実験では、扁桃体は幸福的な表情にも反応し、感情価を持つ刺激に対する一般化された応答を示唆した

。迅速な慣れ効果は、両方の実験において有意に認められた。

したがって、ヒトの扁桃体は感情的に価値のある顔に優先的に反応し、それらに急速に慣れることが示された。

http://www.cell.com/neuron/abstract/S0896-6273(00)80219-6…
Neuron. 1996 Nov;17(5):875-87.
Response and habituation of the human amygdala during visual processing of facial expression.
Breiter HC1, Etcoff NL, Whalen PJ, Kennedy WA, Rauch SL, Buckner RL, Strauss MM, Hyman SE, Rosen BR.

コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション