認知症治療薬は、本当に開発されるのか?~臨床試験、最終段階へ

nounow編集部

認知症の進行を抑える薬(イメージ)
出典元:pixabay.com

米英製薬大手による認知症治療薬候補の臨床試験がフェーズⅢへ進むとの発表がありました。国内でも昨年12月、国立長寿医療研究センターが、マウスの実験で成果をあげています。様々な治療薬開発は実を結ぶのでしょうか?

米英製薬大手、臨床試験フェーズⅢへ

4月8日、イーライリリー・アンド・カンパニー社とアストラゼネカ社は、共同開発している経口アルツハイマー型認知症薬(治療薬候補)の臨床試験が最終段階の第3フェーズに入ったことを発表しました。

この治療薬候補は AZD3293と呼ばれ、アルツハイマー型認知症発症の原因物質とされるアミロイドベータに関連する酵素(BACE)を阻害することで、アミロイドベータの形成を抑制することが期待されています。実際のところ、 AZD3293は第1フェーズの臨床試験において、アルツハイマー病の患者および健康なボランティアの被験者の脳内アミロイドベータ値を低下させることが示されているのです。

アルツハイマー病は現在も医学が直面する最も大きな課題のひとつです。BACE 阻害剤は当疾患の進行を促進するとされる主要因子を標的として阻害する可能性を有しており、両社の協力によって AZD3293 の開発が次の試験相へと進んだことを嬉しく思います。このような疾患修飾によるアプローチは、アルツハイマー病の治療を変える可能性があり、アンメットメディカルニーズの非常に高いこの領域において患者さんの役に立つことが期待されます(アストラゼネカの低分子化合物研究・早期開発担当エグゼクティブバイスプレジデント メネ・パンガロー)
(引用)日本イーライリリー社プレスリリース

第3フェーズの臨床試験(DAYBREAK試験)は 2016 年の第3四半期に患者登録をスタートすることを発表しています。

これまでも最終段階までいきながら中止になったアルツハイマー治療薬はいくつかありとても楽観はできませんが、臨床試験結果が待ち遠しいところです。

国内研究機関の注目される研究

昨年の暮れに国立医療長寿研究センターが出したプレスリリースによると、理化学研究所および同志社大学とのマウスを使った共同研究結果として、「アルツハイマー型認知症の原因とされる脳の神経細胞の死を抑制する薬剤を発見した」とのことです。

今後この薬剤のヒトへの効果が確認できれば、認知症の進行を抑える世界初の治療薬の開発も期待されます。
(引用)国立長寿医療研究センター 2015年12月16日プレスリリース

タウたんぱく質によって認知症発症に繋がる神経細胞の破壊が引き起こされることがわかってきました。しかし、「その相関は明確にはわかっていなかった。今回、モデルマウスを用いた実験によって、タウたんぱく質の凝集を阻害する薬剤が、神経細胞脱落の抑制にきわめて高い効果があることを突き止めた」とのことです。

この薬剤をマウスに3か月間投与したところ、神経細胞の死滅を引き起こすタウたんぱく質の蓄積が阻害され、その結果神経細胞の死が抑制される高い効果が現れ、脳機能が通常通りに回復しました。

この研究はこれから臨床試験の段階でまだまだ先は長いものの注目が集まります。

様々な治療薬開発

アルツハイマー病の原因に関しては、アミロイドベータの蓄積が発症の引き金となり最終的に神経細胞の死や脳の萎縮につながるとする「アミロイドカスケード仮説」が現在の主流であり、アミロイドベータに焦点をあわせる創薬が中心でした。
今回のイーライリリー・アンド・カンパニー社とアストラゼネカ社の研究はアミロイドカスケード仮説に基づいています。

一方タウを主軸とする仮説、その他オリゴマー仮説などがありそれらに基づいた創薬も行われており、国立長寿医療研究センターの研究はタウ仮説に基づきます。

残念ながらまだアルツハイマー病の詳細メカニズムは不明で、様々な仮説のもと創薬に膨大な開発費が投入されています。

また「ドラッグ・リポジショニング」(既存の医薬品を別の病気の治療に使うこと)といって、いくつかの既存薬品がアルツハイマー病の症状緩和に有効とする実験結果が発表されています。脳梗塞の再発抑制薬のシロスタゾール、胃炎治療のセルベックスなどで、これら既存薬品は安全性がすでに確認されている点で創薬よりもアドバンテージがあり近年注目されています。

これら様々な創薬やドラックリポジショニングの既存薬などの研究は世界中で加速しておりその中から有効な治療薬がでてくることが期待されますが、我々には粘り強さが必要なようです。

「しかしアルツハイマー病研究におけるおもな問題のひとつは、世間をあっといわせるほどめざましい結果を待つあいだに、いくつのがっかりさせる結果に耐えられるだろうか、ということだ。」出典:「記憶が消えるとき」(サイエンスライター ジェィ・イングラム著)

(出典)
日本イーライリリー株式会社 2016年4月14日プレスリリース
国立長寿医療研究センター 2015年12月16日プレスリリース