瞑想が脳に与える効果〜若者に反応の速さで勝負するには?

工樂真澄

瞑想が脳に与える効果とは(イメージ)
出典元:pixabay.com

年をとると記憶力や頭の回転、反応の速さなど脳の機能すべてにおいて若者に勝ち目はないのでしょうか?瞑想を取り入れることで、若者に勝る注意機能を持つことも可能とする研究をご紹介します。

瞑想の効能とは?

「瞑想」によって精神が安定し、集中力が増すことはよく知られています。最近の研究から、「瞑想」を長年にわたって生活に取り入れている人は、年をとっても認知能力が下がりにくいことが明らかになりました。

年をとると誰でも、多かれ少なかれ忘れっぽくなります。ただし、その程度は誰でも同じというわけではありません。老化にともなう認知機能の低下の程度は、個人差が大きいこともまた事実なのです。

2016年、フランスのデカルト大学のスペルデュティ博士らは、瞑想の習慣がある人の「注意機能」は、年をとってからも若い人と同じ程度に保たれていることを明らかにしました。

注意を払うときに脳で起こっていること

認知機能の中でも、周りの状況の変化に気づいたり反応したりする能力は「注意機能」とよばれます。普段意識することはありませんが、何かに注意を払っているときには、次のような独立な過程が脳の中では行われています。

  • アラーティング(注意の喚起機能):刺激がなくても周りの状況に反応できる準備をしておく、または準備状態を維持する
  • オリエンティング(注意の定位機能):いくつもの刺激の中から、反応すべき刺激を特定し、選び出す
  • エグゼキュティヴ(注意の実行機能):刺激の対象をモニタリングして、必要に応じた対処を行う

実際にはこれらの過程が密接に連携して、私たちは物事に注意を払うことができるのです。

瞑想が注意機能にもたらす効果

注意機能の測定に用いられているのが「アテンショナル・ネットワーク・タスク(ANT)」と呼ばれるテストです。このテストではまず画面の中央にバツ印が表れます。次に「手がかり刺激」と呼ばれる合図がバツ印の上方、または下方に表れます。

その後で5つの矢印が1列になって表示されます。矢印が表示されるのは手がかり刺激と同じ場所のこともあれば、違う場合もあります。また手がかり刺激は表れないこともあります。矢印の向きは全て同じですが、真ん中の矢印だけが逆向きの場合があります。

被験者は真ん中の矢印が他の4つと同じ向きであるか、逆向きであるかをボタンを押してなるべく早く答えます。単純なテストですが、ここまでの画面の流れはほんの数秒です。テストではこれを何十回も繰り返すため、相当な注意力と集中力が必要になります。

実験に参加したのは次の3つのグループです。「瞑想の経験のない高齢者」と「瞑想を習慣的に行っている高齢者」は、平均年齢がどちらも67歳です。そして3つ目のグループは「瞑想の経験のない若者(平均年齢27歳)」です。習慣的に瞑想を行っているグループは、禅やチベット式の瞑想を11年以上(最も長い人では44年間)、定期的に行っている人達でした。

結果をまとめると、注意機能のうちアラーティングとオリエンティングの速さは、どのグループ間でも大きな差はありませんでしたが、エグゼキュティブでは明らかな違いが見られました。「瞑想を行っている高齢者」が最も反応が速く、「瞑想を行っていない高齢者」の反応時間の約半分程度でした。

また統計的な補正を行ってみると、「瞑想を行っている高齢者」と「瞑想を行っていない若者」では、エグゼキュティブの速さが同じくらいだということも明らかになりました。

瞑想を習慣に取り入れていつまでも若々しく!

上記のことから、長期間にわたる瞑想の習慣は注意機能の中でも特に、刺激に対する反応の速さに効果があることがわかります。

年をとれば見た目や運動能力などに衰えが訪れることは否めません。しかし認知機能については、心がけ次第で若いときの状態を保てるのだと知ると、なんだか希望が湧いてきます。これを機会にぜひ一度、瞑想の世界に触れてみてはいかがでしょうか。

The protective role of long-term meditation on the decline of the executive component of attention in aging: a preliminary cross-sectional study.
Sperduti M et al. Aging Neuropsychol Cogn. 2016 Mar 16:1-12.PMID: 26982654