筋肉が少ない人は睡眠の質が悪い!?~「睡眠」と「筋肉」の深いカンケイ

工樂真澄

筋肉と睡眠の深い関係(イメージ)
出典元:pixabay.com

以前nounowでとりあげましたが(「筋トレが脳を救う!?」)、筋肉量が認知機能維持には重要で、筋トレを継続的に行うべきです。しかし案外見落とされがちなのが「睡眠」です。最近はやりの24時間フィットネスなどに寝る時間を削って通っている方もいるのでは?今回は「睡眠と筋肉」の密接な関係を示した研究をご紹介します。

睡眠が筋肉量に及ぼす影響

ドイツ、ベルリンにあるカリテ医科大学のブッハマン博士らは2016年に「高齢者の睡眠と筋肉」についての調査を発表しました。

調査では1196人(平均年齢68歳)の人たちに、まず睡眠の質や長さを申告してもらいました。同時に握力や運動能力、さらにBMIや ALM(手足の除脂肪体重:手足を構成している成分から脂肪や脂肪組織を除いた部分)を調べて、筋肉量を割り出しました。

調査の結果、筋肉量の少ない男性の中には、睡眠の質が低い人が多いことがわかりました。女性では筋肉量と睡眠の質にそれほど明確な相関はありませんでしたが、睡眠の質が低い人は「握力」が弱い傾向があることがわかりました。

筋肉合成には睡眠が欠かせない

筋肉は主に「タンパク質」で出来ています。筋肉を作るためには、材料となるタンパク質を含む食事が大切です。しかしいくら良質のタンパク質を食べていたとしても、それがそのまま筋肉になるわけではありません。食事から摂ったタンパク質は体内でまず分解されて、体が必要としているタンパク質に作り変えられます。

筋肉の合成をするときに働くのが「IGF-1」や「テストステロン」といったホルモンです。筋肉量を維持しようと思えば、これらの物質が体内で働きやすい環境にしなければなりません。しかし睡眠不足では、これらの物質の分泌が低下することが、2015年にブラジルのサンパウロ連邦大学のモニコ・ネト博士らの、ネズミを使った研究によって確認されています。

またインスリンは食後に分泌されタンパク質を作るように働きますが、睡眠の質が低下すると、高齢者では特に、インスリンの働きが鈍くなります。そのためにタンパク質の合成が進みにくくなるのでは、と考えられます。

「睡眠不足だと仕事がはかどらない」といった経験から、睡眠が脳の働きに影響することは明らかでしょう。今回の研究から、睡眠不足では脳だけでなく、筋肉の合成にも変化を与えることがわかりました。 睡眠と筋肉量の関係は高齢者では特に顕著ですが、タンパク質の合成の方法は若い方でも同じです。若いからといって睡眠を削っていれば、年をとってから後悔することになりかねないのです。

質の良い睡眠のために

睡眠は生活の基本です。子どもにとってはもちろんのこと、大人でも高齢者でも睡眠の重要性は同じです。しかし睡眠のパターンは年齢とともにも変化して、レム睡眠が減り、また眠りそのものが浅くなります。睡眠は長ければいいというわけでもなく、その「質」が重要です。

質の良い睡眠のために日頃から気をつけたいのは、

  • 日中の適度な運動
  • 規則正しい生活のリズム
  • 就寝前はスマホやパソコンなど「ブルーライト」を避ける
  • 夕食後のアルコールやコーヒー、タバコは控えめに

質の良い睡眠をとることで「筋肉を作っているんだ」という意識を持つと、睡眠に対する考え方も変わるのではないでしょうか。

(出典)
Sleep, Muscle Mass and Muscle Function in Older People.
Buchmann N et al. Dtsch Arztebl Int. 2016 Apr 15;113(15):253-60. PMID: 27151463

Resistance training minimizes catabolic effects induced by sleep deprivation in rats.
Mônico-Neto M et al. Appl Physiol Nutr Metab. 2015 Nov;40(11):1143-50. PMID:26513007