落ち込んだとき解決してくれるのは時間?それとも睡眠?

nounow編集部

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出典元:pixabay.com

辛い出来事や事件に遭遇し強いストレスを感じたとき、周りの人から「きっと時間が解決してくれるよ」あるいは「とりあえず寝れば解決するよ」と言われたことがあるのではないでしょうか。さて「時間」と「睡眠」どちらが心の傷を回復させる有効な手段なのか、今回はその真相に迫る研究をご紹介します。

時間が薬になるという誤解

アリゾナ州立大学の研究チームが米国の心理科学会誌「Perspective of Psychological Science」に提出した研究結果によると、時間には人の心を回復する効果はなく自然治癒力の効果は乏しい、とのことです。

自然災害など人生を変えるような出来事に遭遇した場合、回復するまでに予想以上の時間がかかる可能性も十分にあり、悪化した健康状態が長期的に続くこともあり得るとしています。

これまで、人には回復力があると信じられてきたことこそ、より効率的な回復を図るための必要な支援を受けることを阻害してきた可能性があるとも警告しています。

善意に満ちた言葉が、心の回復は受動的な行動であるという通説を不変のものにしてしまっている可能性があります。

この研究結果からは、ただ時が過ぎるのを待つことは必ずしも最善策ではない、といえます。

心を癒す睡眠

カリフォルニア大学バークレー校の神経科学者マシュー・ウォーカー氏が率いる研究チームは、心身ともに健全な34人のボランティアを募り実験を行いました。

実験では被験者を2つのグループに分けて、全員に150枚の写真を見せながら脳の活動をMRIでスキャンします。

12時間の間隔を空けて、同じ写真を2回見てもらいました。写真は日常的なものから、人の目を覆いたくなるような光景まで、人間の感情を刺激する様々なものです。

1つのグループは午前中に写真を見て、睡眠を挟まずその日の夜に再度同じ写真を見てもらいます。もう1つのグループは夜に同じ写真を見てから一晩眠り、次の日の朝に再度同じ写真を見てもらいます。

その結果、睡眠をとったグループの方が、2回目に写真を見たときの感情の反応が軽いという結果になりました。

睡眠中にMRIで脳をスキャンしたところ、感情を司る扁桃体の反応性が大きく減少し、理性的な行動を司っている前頭前皮質の働きが活発になっていることがわかりました。これは、扁桃体の活動低下により、合理的な判断をする前頭前皮質が写真の影響を和らげたと考えられます。

つまり、睡眠によって、感情的な行動が抑えられ、理性的に行動できたということになります。

レム睡眠中のノルエピネフリンの減少

人間は睡眠中、ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返しています。その中でレム睡眠時に、脳内である種の電気信号パターンが減少し、その結果ストレス物質が減り、受けた刺激への感情的な反応がやわらぐことがわかりました。

レム睡眠時には、脳のストレスに関係のあるノルエピネフリンという神経伝達物質が明確に減少します。低ノルエピネフリンという神経科学的に安全な状態で、前日の感情的な経験が加工されることによって、翌朝目覚めたときに、それらの経験が感情的な意味でソフトなものになり、処理できると感じるようになるのです。

これらの研究結果から、睡眠は心を回復させる効果があるとも言えます。気分を回復する手段として、ただ時が過ぎるのを待つのではなく、睡眠をしっかりとることが良いかもしれません。

<参考論文・参考サイト>
http://pps.sagepub.com/content/11/2/175
http://www.cell.com/current-biology/abstract/S0960-9822%2811%2901248-6
http://www.cosmobio.co.jp/aaas_signal/archive/ec-20141028.asp
http://stke.sciencemag.org/content/7/349/ec299.abstract
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25264259
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25264253
https://www.sciencedaily.com/releases/2011/11/111123133346.htm