書道でストレス解消! 軽度認知症改善にも効果あり!

工樂真澄

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出典元:pixabay.com

「お経」を書き写す「写経」が、静かなブームになっているそうです。「文字を書く」のは人類の特権ですが、その目的は主に、大切なことや過去にあったことを記録として残したり、思想や考えを他の人に伝えたりするためです。しかし「文字を書く」という行為には、これらの目的とは別のところにある、「癒し」の効果も認められています。

書道で認知機能が改善

2011年、香港中文大学のKwok博士らが発表したのは、「書道と認知機能」に関する論文です。「書道」というと、学校時代に墨だらけになりながら書き初めをして以来、すっかりご無沙汰だ、という方も多いでしょう。しかし書道は日本だけでなく、中国が世界に誇る重要な文化の一つ。その中国だからこそ、書道が認知機能へ与える影響を調べる研究があっても、驚くことではないのかもしれません。

研究は、65歳以上の軽度認知症と診断された31人を対象に行われました。被験者をランダムに二つのグループに分け、片方のグループは書道の先生の指導のもと、毎日30分、週に5日の書道レッスンを8週間にわたって、受けてもらいました。もう一方のグループは対照群で、特に何の訓練も行いませんでした。

書道のレッスンを始める以前と、8週間のレッスンの後に、認知機能を測るテストを行ってもらいました。実験の結果、書道のレッスンを受けていたグループでは、注意力や集中力、計算力など、多方面での認知機能テストの成績が訓練前に比べて上昇していました。対照グループでは、このような認知機能の改善は見られませんでした。

書道はストレスを軽減させる

2014年、香港大学のKao博士らが発表した論文では、「書道」と「瞑想」、それぞれのストレス軽減効果を比較しています。平均年齢25歳の若者30人をランダムに3つのグループに分け、一つ目のグループは書道レッスン、二つ目のグループは瞑想訓練を8週間行ってもらいました。三つ目のグループは対照群で、特に訓練なしで過ごしてもらいました。被験者はあらかじめ、呼吸の速さや体温などから、ストレスレベルが測定されています。8週間の訓練の後、再び生理的測定を行って、どれくらいストレスが減っているかを調べました。

書道のレッスンを受けたグループでは、訓練期間後に心拍数が減少、また体温が上昇していました。これは瞑想をしたグループと同じ傾向です。ただし呼吸数と筋電図の変化は、瞑想グループとは異なる傾向を示しました。この実験から書道をすることで、全く同じではないものの、瞑想に似たストレス軽減効果があることが示唆されました。

書道の何がいいの?

日本人ならお分かりでしょうが、書道では短時間のうちに、実に多くのことに注意を払う必要があります。全体の字のバランスを頭に思い描きながら、書き順どおり、一筆ごとに「はらい」や「とめ」などに気を配った覚えがあるでしょう。筆のかすれ具合、力加減などを工夫していくうちに、呼吸が整い、リズム感が出てくるはずです。この過程はまさに瞑想の導入に相当します。中国では書道を行うと、高血圧や2型糖尿病の改善、さらにアルツハイマー病患者さんの認知機能の向上に効果があることが、すでに調べられています。

この秋、どこに行こうか迷われている方は、紅葉狩りも兼ねて、お寺で写経してみるのはいかがでしょう。写経体験のできる寺はインターネットでも簡単に検索できます。書道とは無縁だという方も、あらたまった環境で文字に向き合ううちに、きっと日頃のストレスから解放されることでしょう。

Cognitive effects of calligraphy therapy for older people: a randomized controlled trial in Hong Kong.
Kwok TC et al. Clin Interv Aging. 2011;6:269-73.

Calligraphy and meditation for stress reduction: an experimental comparison.
Kao H Sr et al. Psychol Res Behav Manag. 2014 Feb 13;7:47-52.