睡眠の質の低さと認知症の関係

大塚真紀

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出典元:pixabay.com

睡眠と認知機能の関係についてはこれまでもnounowでとりあげてきましたが、今回は睡眠の質と睡眠中の呼吸状態が認知機能に影響する可能性を明らかにした論文をご紹介します。

睡眠と認知症の関係とは

睡眠と認知症の発症には、密接な関係があるといわれています。現代の日本人は、仕事や家庭などで忙しく睡眠不足になっている方が多いです。誰しも今までに、睡眠不足で頭がうまくはたらかないと実感したことがあるのではないでしょうか。

睡眠不足が続くと、脳の中に不要な老廃物が蓄積すると考えられています。寝ている間に脳の中に存在する脳脊髄液(のうせきずいえき)が脳内の老廃物を除去するので、睡眠不足が続くと十分に老廃物が除去できなくなるそうです。認知症の発症原因といわれているアミロイドβ蛋白も、寝不足によって老廃物と同様に脳内に蓄積する可能性が高いです。そのため、寝不足は認知症の発症と関連するのではないかと考えられています。

シンガポールの研究チームから発表された報告によると、睡眠時間が1時間短いと脳が萎縮し、認知機能が低下することが明らかになっています。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4098802/

睡眠時無呼吸症候群と認知症

睡眠時無呼吸症候群という言葉を聞いたことがあるでしょうか。寝ている間に、大きないびきと共に呼吸が何度も止まる病気のことです。原因としては、肥満が多いといわれていますが、顎が小さい方や鼻、のどの病気がある方でも発症する可能性があります。また、高齢者や閉経後の女性でも起こりやすいといわれています。

睡眠時無呼吸症候群の方は、寝ている間に呼吸が何度も止まっているので十分に脳が休むことができません。症状としては、日中の眠気、頭痛、寝ているのに改善しない倦怠感などを自覚します。睡眠時無呼吸症候群の怖いところは、居眠り運転や集中力低下による交通事故を引き起こすだけでなく、高血圧や心臓病、脳卒中、糖尿病などの発症原因となるといわれている点です。

また、睡眠時無呼吸症候群は認知症とも関連しているといわれています。睡眠時無呼吸症候群では、寝ている間に低酸素となるので脳に低酸素ストレスがかかると考えられています。脳に低酸素ストレスがかかると、認知症の原因物質といわれているアミロイドβ蛋白が脳内に蓄積するといわれています。一方で、睡眠時無呼吸症候群の治療を行うと認知症を予防できたという報告もあります。
http://659naoso.com/sas/trouble

睡眠の質の低さは認知機能障害と関連する

スイスの研究チームは、認知機能障害を認める方において睡眠の質が低いことを2017年1月に「Neurology」誌に発表しました。

研究チームはスイスに住む65歳以上の高齢者580名を対象に、睡眠に関するアンケートや睡眠の検査、認知機能の検査を行いました。睡眠に関する検査では、ポリソムノグラフィーという機械を使用し、客観的に寝ている間の睡眠の状態やリズム、低酸素の程度などを評価しました。
結果を見ると、認知機能障害のある高齢者において睡眠の質が低いだけでなく、寝ている間に低酸素となっていることがわかりました。この結果から、睡眠の質や睡眠中の呼吸状態が認知機能障害と関連している可能性が明らかになりました。

今回の研究結果は、すでに報告されている睡眠不足や睡眠時無呼吸症候群による低酸素と認知機能障害の関連を肯定するものです。しかし、他の研究と比べて睡眠の質や低酸素の状態をポリソムノグラフィーという機械を使用して客観的に評価したという点で、信頼性が高い研究といえます。

<参考論文・参考資料>
Neurology. 2017 Jan 31;88(5):463-469. doi: 10.1212/WNL.0000000000003557. Epub 2016 Dec 30.
Sleep characteristics and cognitive impairment in the general population: The HypnoLaus study.
Haba-Rubio J1, Marti-Soler H2, Tobback N2, Andries D2, Marques-Vidal P2, Waeber G2, Vollenweider P2, von Gunten A2, Preisig M2, Castelao E2, Tafti M2, Heinzer R2, Popp J1.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28039311