教えて!認知症予防〜脳神経外科医篠浦先生に聞く(1)

篠浦伸禎

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5月23日20時に放送されたテレビ東京「主治医がみつかる診療所」の「脳をいつまでも健康に!最新最強大人の脳育法」に出演された都立駒込病院脳神経外科部長の篠浦伸禎先生は脳の覚醒下手術ではトップクラスの実績を誇ります。篠浦先生は昨年12月12日週刊現代「人として信頼できるがんの名医100人」に脳領域で唯一選ばれるなど日本を代表する脳外科医師です。脳を長年見てこられたご経験をもとに脳に関する著書も多数あります。今回篠浦先生から認知症予防についてのコラムを寄稿いただき、何度かにわけて掲載しますが、まずは第一回です。

認知症は生活習慣が引き金となって発症する病気

私は、脳外科医として約30年臨床にたずさわってきました。特にこの10年以上は、覚醒下手術という患者さんが文字通り覚醒した状態で手術をする最先端医療を行ってきました。もちろん覚醒下手術を行う目的は安全に手術を行えることにつきます。しかし副産物として、患者さんの脳をさわったり摘出したりすることで、様々な神経症状の変化が現れるので、これほど脳機能について直截にわかる方法はありません。それらの臨床経験や最新の脳科学に基づいて、私はこの数年に多くの本を出版してきましたが、今回はそれらの知見の中で、認知症予防についてのべたいと思います。

ほとんどの認知症は、当然のことながら体の外から侵入してくる何かに感染したり、頭を打ったりして起こるわけではなく、自分の体の中にもともとあるものが、なんらかの異常を起こして発症するものです。つまり認知症は、ガン、心臓疾患、糖尿病、膠原病などの病気と同じように、誤った生活習慣が大きな引き金となって発症する病気です。

その生活習慣は、大きく3つの要因から解析することができます。その3つとは、食事に関すること、運動を含めた体に関すること、心に関することです。そこでまず、どのような食事をすれば認知症を防ぐことができるかをのべていきます。

認知症を予防する食事とは

 食事に関しては、一番様々な病気との関連で調べられてきたのは、地中海式食事です。地中海式料理とは、イタリアやスペインのような南欧の地中海に面した人たちが、伝統的に食べてきたものを意味します。食事の内容は、野菜、魚介類、オリーブ油、果物、ナッツ類、穀類を多用している食事ということになります。さらに、食事の時に少量のワインを飲み、肉類や乳製品はあまり使いません。一方、北欧などの西欧式食事は、地中海式食事に比べて、酪農が盛んなため、肉類や乳製品を多くとります。

その地中海式食事と西欧式食事を比較した多くの研究によると、地中海式に準じた食事を毎日とっている人は、そうでない人に比べて、ガン、心臓病、アルツハイマー病などの様々な病気の発症率が低く、その結果として死亡率が低いという結論がでました。つまり、認知症予防のためには、地中海式食事をとることがいいということになります。

この地中海料理と共通点が多いのが、実は日本食です。日本人は少なくとも戦前までは、欧米諸国に比べると野菜や果物をたっぷり摂っており、さらに魚介類の摂取が多く、乳製品や肉類をあまり摂取していませんでした。戦後認知症が増えたといわれていますが、ひとつは戦後日本人が米国式の食生活をとりいれたことと大きく関わっているようです。認知症のみならず、米国のマクガバンレポートにあるように、ガン等の病気の予防に一番理想的な食事は、江戸時代に日本人が食べていた食事になります。それは、戦後沖縄が基地の影響で米国風の食事になって、急速に寿命が短くなったことをみてもあきらかでしょう。

食の世界では身土不二という言葉があります。つまり、その土地で伝統的につくってきたものを食べることが、その土地にずっと住んでいる人の健康にいいという意味です。そういう意味では、日本人はオリーブオイル、赤ワインを使う地中海式料理を毎日食べるよりは、日本食を主体にするほうがいいのではないかと私は考えています。

では、なぜ日本食が認知症予防にいいのかを次回で述べたいと思います。