教えて!認知症予防〜脳神経外科医篠浦先生に聞く(2)

篠浦伸禎

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脳の覚醒下手術でトップクラスの実績を誇る脳の名医、都立駒込病院脳神経外科部長の篠浦伸禎先生が認知症予防について語る第二弾は「日本食がなぜ認知症予防によいのか」。

江戸時代の日本食が理想?

ご存知の方も多いかと思いますが、1970年台後半にマクガバンレポートが米国で発表されました。これは、その時の大統領であるフォードが、医療が進歩しているにも関わらず、その当時の米国でガンや心臓病、脳卒中で死ぬ人の数が増えていることに疑問を持ち、上院議員のマクガバンにその原因についての大規模調査を依頼し作成されたものです。そしてレポートでは、米国人の食の習慣、つまり肉などの動物性食品を大量に食事で摂っていることがガンや心臓病、脳卒中が増加した原因であり、世界中見渡し歴史的にみても江戸時代の日本食が理想である、という結論に至りました。

江戸時代の日本食は、江戸中期からの江戸を除けば、基本的には白米ではなく玄米を食べていました。実は、江戸中期から白米を食べだした江戸の住民は、それまでにはなかった江戸病といわれる、今でいう脚気にかかるひとが多くでました。今の栄養学からみると、玄米から胚芽を除いたものである白米は、胚芽に含まれているビタミンBを失っているため、白米のみ食べることで脚気を誘発したと説明できます。これは、日露戦争当時の陸軍において、脚気で命を落とす人がたくさんいたことにもつながる話です。

江戸時代の日本食は、その玄米にプラスして、動物性の食品はほとんどとらず、野菜、魚、味噌汁などの発酵食品が食事の主体でした。前回、身土不二ということをのべましたが、夏に多くの雨が降る気候のため米をつくりやすいこと、緑豊かで土壌の肥えた自然があり野菜をつくりやすいこと、周囲を海に囲まれており魚が容易に手に入ること、などの風土が、長い歴史をへて日本食をつくりあげたと思われます。

植物由来の未精製食品が生活習慣病を防ぐ

では、これらの食品それぞれが、認知症の予防に役立つことをご説明します。

まず、食が病気を予防するかについてどのように評価すべきかについてのべます。食は薬と違って、昔からその地で行われてきた習慣に基づいているため、科学的にいいかどうかを証明するのはかなり難しい面があります。今まで食について多くの本が出版されていますが、私の印象では自分の食の方法のみを主張して、信憑性に欠ける本が多いように感じます。

その中で、私が一番信用できると感じたのは、米国の栄養学者で、栄養学のアインシュタインといわれているT.コリン.キャンベルの書いた本です。彼の書いた「葬られた「第二のマクガバン報告」」は、基礎から臨床までの膨大な科学的研究に基づいて結論を導き出しており、極めて説得力の高い結論をのべています。

その本で彼のたどりついた結論は、極めてシンプルです。それは、プラントベース(植物由来)のホールフード(未精製、未加工の食品)が生活習慣病を防ぐ、というものです。ここでいう生活習慣病とは、アルツハイマー病などの認知症、脳血管障害のみならず、ガン、心臓疾患、糖尿病、自己免疫疾患など、自分の生活習慣がもとで自分の体の中から発症するすべての病気をさします。

彼は以下のようにのべています。

「動物性食品が多く、植物性食品の少ない食事の組み合わせは、アルツハイマー病のリスクを高めてしまう」

「果物と野菜を毎日3サーヴィング(皿)(注:桃であれば2分の1カップ、ジャガイモ1個)余計にとると、脳卒中のリスクは22%減少する。

では、次回は理由も含めて日本食、端的にいえば玄米菜食がなぜ認知症を含めた脳の病気の予防にいいのかを述べたいと思います。