教えて!認知症予防〜脳神経外科医篠浦先生に聞く(3)

篠浦伸禎

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脳の覚醒下手術でトップクラスの実績を誇る脳の名医、都立駒込病院脳神経外科部長の篠浦伸禎先生が認知症予防について語る第三弾。認知症を含めた脳の病気の予防に玄米菜食がいいことにふれた前回に続き、今回はその中で玄米がなぜいいのかを詳しく解説いただいています。

玄米と白米の栄養素比較

我々の大半は白米を食べていて、玄米食の人は少ないかと思います。では、どのくらい両者は違うのでしょうか。玄米と白米を、栄養学的に比較してみます。

栄養に関していうと、玄米には含水炭素(デンプン)、油、タンパク、ビタミン類、ミネラルなど人間が必要とするもののほぼすべてが含まれています。ビタミンだけでもB1、B2、B6、E、Kを含み、さらにリノール酸、リノレン酸、食物繊維、酵素など、人の体に必要な栄養素が豊富に含まれています。

一方、玄米を精白すると、米ぬか(胚芽を含む)と白米が得られますが、いま述べた栄養素のうち、実に95%が米ぬかのほうに存在し、白米には5%しか残っておらず、白米ではそれらの栄養素はほとんど失われているといっても過言ではありません。

実は昔、玄米や粟、稗を食べていたころは、一汁一菜であっても、食物に不足感はありませんでした。江戸中期以降、白米が主食になると、栄養学的にみても一汁一菜では、どうにもならなくなりました。白米の栄養不足を補うためには、大変な量の多彩な副食を用意しなければなりません。

栄養学的には、玄米にも不足するものがあり、それはビタミンA、B12、Cになります。蛋白、カルシウム、鉄などは充分ではなくても最低必要量はあるので、玄米にプラスして野菜、海草、豆腐、味噌汁を食べることで、すべての栄養素が間に合います。つまり、玄米を中心とした日本食は、栄養バランスがすぐれているので、今の栄養学で勧められているように、1日30品目も摂る必要はありません。玄米は腹持ちもよく、少食ですみます。しかも、玄米を中心とした日本食は、少量ですべての栄養素がとれます。

ところが白米だと、十分な栄養をとるには、一日にほうれん草なら大皿山盛り4杯、肉や魚なら3キロ、リンゴなら10キロも摂らねばなりません。白米ですべての栄養素をとろうとすると、大きく胃腸に負担がかかることになります。逆に言うと、玄米中心の日本食は、少量で十分な栄養素があるので、胃腸に血流が集まることなく、脳に十分な血流と栄養素を送り込むことにつながります。これが、玄米菜食が脳にいいひとつの理由です。

まだある玄米の脳と体への効能

また、玄米の糠の「植物繊維」は、胃腸を整え、便通をよくし腸内の老廃物を排出し、腸内の働きを正常にします。特に玄米の皮、すなわち米糠の部分にはヘミセルロースという食物繊維が含まれます。ヘミセルロースは分子構造が鎖状になっていて、そこには有害物質を包み込む働きがあり、包み込まれた有害物質は便と一緒に排出されるようになっています。つまり、玄米は排泄力(デトックス効果)が強く、便通を整えることで腸と血液をきれいにします。有害物質を除去することも脳の働きにプラスになります。

さらに、玄米を食べると、白米と違って血糖値がゆっくり上がるため、膵臓に負担をかけないのみならず、白米のように血糖値が乱高下することによる脳の混乱を防ぐことができます。

最後に、玄米はよく噛まざるをえないので、噛むことによる認知症予防などの脳にいい効果もあります。

人間、少なくとも日本人は、歴史的に玄米などの澱粉(穀物食)を摂る動物です。これは穀物をかみ砕く臼歯が、他の動物に比べて発達していることもひとつの証拠になります。また、人間は乳児時代に、すでに大人の十分の一程度の澱粉分解酵素を、その唾液の中に持っていて、多少でも穀物食を含む食事を与えられると、すぐさま大人なみの酵素を分泌できるような仕組みになっています。この現象は、他の肉食動物や草食動物には見られません。また、人間の唾液に蛋白分解酵素がないことも、穀物主体で食事をしてきたことのひとつの証拠です。つまり、歴史的にみても玄米などの穀物を主体にすることは理にかなっているのです。

では、次回、玄米菜食のうち、菜食がなぜ認知症を含めた脳の病気の予防にいいのかをのべます。