教えて!認知症予防〜脳神経外科医篠浦先生に聞く(7)

篠浦伸禎

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名医篠浦先生のシリーズコラム第7弾。これまで日本食が脳に良いことについて解説いただきましたが、今回のコラムはその日本食の中でも、海のものに関してです。日本は周囲を海に囲まれており、朝から魚などの海産物をたくさんとる習慣がありました。その海産物の中で、魚や昆布やわかめなどの海草類がなぜ脳に良いのかを解説いただきます。

魚に含まれるDHAとEPAの効能

イワシ、サバ、マグロなどの青魚や鮭には、オメガ3系の不飽和脂肪酸が多く含まれています。オメガ3不飽和脂肪酸の中で脳に良いものが、DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)です。

DHAは、脳の神経細胞において、情報の伝達をスムーズに行えるように手助けします。また、脳の成長を助ける働きもあり、学習能力や記憶能力をアップさせるのに役立ちます。これはもちろん子供だけではなく、認知症予防にも役立ちます。

EPAは、血小板の固まりの発生を防ぎ、血液をサラサラにします。また、血管の柔軟性を高め、血管を健康に保つ働きがあります。そのため、EPAをとることで、脳の血管に障害が起きることで発症する脳梗塞などを予防する効果があります。さらに、EPAは脳内の神経伝達物質であるセロトニンの働きを促してくれます。そのため、うつ病患者がEPAの摂取をすると徐々に精神を安定させることができるようになるといわれています。大規模な調査によると、魚をよく食べている人ほど精神が安定しているということ、魚をよく食べている国程うつ病患者が少ないということが報告されています。

ただし、これらDHAやEPAは、ほとんどが体内で作り出すことができない栄養素なので、食品から摂取する必要があります。そのため、魚をとることが脳の健康に大事なのです。また、DHAとEPAは酸化しやすいので、抗酸化作用のある緑黄色野菜や柑橘類と組み合わせて一緒に食べることがポイントです。これもまさしく、日本食になります。

海藻類に含まれる様々な栄養素

次いで、海草類についてのべます。味噌汁のだしなどに昆布がよく使われます。昆布には、独特のぬめりがありますが、その中には、アルギン酸など、天然の水溶性食物繊維が含まれています。アルギン酸には、塩分を吸着させることで血圧を下げたり、血糖値を抑制したり、コレステロールを低下させる作用があり、脳の動脈硬化予防に役立ちます。

また、昆布のうまみ成分はグルタミン酸で、脳の神経伝達成分にもなる脳にいい成分です。脳の機能を妨げるアンモニアを無毒なグルタミンに変えたり、食塩などの有害元素を体外に排出させる働きもあります。

さらに 昆布には、甲状腺ホルモンの主原料となるヨードも豊富に含まれています。甲状腺ホルモンは主に、細胞の代謝機能や自律神経をコントロールしています。甲状腺ホルモンは、もちろん適量が分泌される必要がありますが、いきいきとした雰囲気や安定した精神を保つのに役立ち、エネルギー代謝も促進させるので、脳の疲労回復にも貢献しています。

日本人がよく味噌汁にいれるのが、わかめです。わかめにも食物繊維が豊富に含まれています。わかめの食物繊維は、水に溶けないセルロースという不溶性食物繊維と、水に溶けるアルギン酸という水溶性食物繊維があります。食物繊維は、有害物質を取り除き、腸内環境をととのえ、脳にいい働きをすることはすでにのべました。また、わかめやひじきなどの海草類は、ビタミンB12とカルシウムを豊富に含んでいます。ビタミンB12には、脳の神経細胞の働きを活発にして、記憶力と集中力を向上させる働きがあります。カルシウムには神経をしずめて、イライラを防ぐ作用があり、認知症の原因となるストレスの解消に役に立ちます。

以上のように、日本人が伝統的に食べてきた海のものには、多くの脳に良い成分があり、今後もこのような食生活を維持することが大事だといえましょう。