結核薬に認知症予防効果の可能性

nounow編集部

既存医薬品が認知症予防に効果あり(イメージ)
出典元:pixabay.com

認知症予防の新薬開発がいずれも臨床試験で失敗を繰り返してきた中、大阪市立大らの研究ではこれまで標的とされてきたアミロイドベータとは別の物質に焦点をあて、マウス実験ながら既存の結核薬が有効との結果を示しました。

結核などに使う薬が認知症予防効果あり!?

認知症はその発症の25年ほど前から脳内に異質なたんぱく質が蓄積し神経細胞が崩壊することによって発症するというメカニズムがわかってきています。今、世界が認知症予防や治療の創薬研究に取組んでいますが、効果的な予防薬・治療薬が待たれるところです。そんな中、3月29日に大阪市立大学は結核などの治療に使用していたリファンピシンという薬が、認知症予防効果があることを発表しました。

既存医薬品であるリファンピシンに認知症を予防する広い作用があることを世界で初めてつきとめました。

これは、大阪市立大学の富山准教授らのグループが金沢大学、富山大学、米国ノースウェスタン大学と共同で行ったマウスを使った研究であり、英国の神経学雑誌Brainのオンライン版に掲載されました。

リファンピシンってどういう薬?

リファンピシンは、肺結核及びその他の結核症、マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症を含む非結核性抗酸菌症、ハンセン病に効く薬です。副作用は肝障害やアナフィラキシー、腎不全など挙げられますが(いずれも頻度不明)、長く使われてきた既存医薬品であるためその薬自体の安全性は認められているといえるでしょう。

リファンピシンは古くから(1960年代から)ある薬なので副作用に関する情報も蓄積されており、今ではジェネリック医薬品として安価に供給されています。一部の患者で問題となる副作用(肝障害や薬物相互作用)さえクリアできれば、未だ有効な治療法がない認知症に対して、安価で内服可能なリファンピシンによる予防が可能になるかもしれません。また、本研究を契機として、より安全でより有効な新しい予防薬の開発が進むことも期待されます。

標的はアミロイドベータではない

冒頭に述べた認知症発症の原因となる異質なたんぱく質とは、アミロイドベータやタウなどと呼ばれるものです。これまでの認知症治療薬は特にアミロイドベータを標的としてきましたが、臨床試験では失敗を重ねてきました。

この理由として考えられるのは、発症した後にいくらアミロイドベータを除去しても、すでに多くの神経細胞が死んでしまった後では、もはや手遅れであるということです。

前述のたんぱく質は脳内でオリゴマーと呼ばれる数分子~数十分子からなる小さな会合体を形成し、神経細胞の機能を阻害することで病気が発症すると考えられていますが、実は本研究はその「オリゴマー」を標的にしたものでした。

これまでの治療薬は予防投与を前提として開発されたものではなく、費用・副作用・投与法などの点で問題を抱えています。認知症を予防するには、長期にわたって薬を服用する必要があるため、予防薬には、安全・安価・内服可能で、できれば一剤で認知症の様々な原因タンパク質オリゴマーに作用できることが望まれます。

発表によると、マウスを使った実験ではたった1カ月間の経口投与でリファンピシンが各たんぱく質オリゴマーを減少させ記憶を回復させることを示したと同時に、マウスの年齢や期間によって投薬の用量を調整できる可能性もわかりました。本研究によって、リファンピシンが様々な認知症の予防薬として有望株であることが示されたと述べられています。

世界が待ち望む予防薬開発

国際アルツハイマー病協会(Alzheimer’s Disease International)の2015年のレポートによれば、世界の認知症患者数は2015年で4680万人、2030年には7470万人、2050年には1億3150万人になると予測され、それにかかる経済費用は2015年で8180億米ドル、2030年には2兆米ドルになると見積もられています。

日本だけではなく、世界的な課題である認知症(アルツハイマー病)を予防・治療するための安全な予防薬の開発は、試行錯誤を繰り返して今に至ります。まだマウスの段階でありこれからですが、認知症にかかる経済的負担は甚大であり、効果的な予防薬の開発が待ち遠しいところです。

(出典・引用)大阪市立大学プレスリリース