うつが先か、認知症が先か

佐藤洋平

うつと認知症
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うつと認知症。どちらが引き金になりどちらの症状がでるかについてはまだ決着がついていません。今回はうつが認知機能低下につながるとする論文を紹介します。

うつと認知症の関係

認知症の本を読んでいると老人性のうつ病と診断されていたのによくよく調べてみると認知症だったという話がでてきますが、はたして認知症と抑うつ症状の間にはどのような関係があるのでしょうか?

様々な研究から抑うつ症状と認知症は密接な関係が有ることは示されていたのですが、どちらが引き金になってどちらの症状が出るというのは今ひとつ決着がついていなかったようです。

今日取り上げる論文は、この抑うつ症状と認知機能の関係について調べたものです。

うつは認知機能低下幅を大きくする

この研究では約1200人の高齢者を対象に抑うつ経験のあるなしがその後の認知機能の低下とどのような関係にあるかについて特殊な統計方法を用いて調べています。

やはりまず抑うつ経験があって、その後に認知機能の低下が引き起こされることが統計的に示されています。

なぜこのようなことが起こるかについてはいくつか仮説があるようで、主なものとしては

  • 抑うつ症状は認知症の初期症状である
  • 抑うつ症状が認知症の臨床症状を顕在化させる
  • 抑うつ症状が海馬にダメージを与えるため

などがあるようです。

いずれにしても病的な抑うつ症状を経験したことがある人は年をとった時の認知機能の低下幅も大きくなる傾向があるようです。

もちろん抑うつ経験があれば必ず認知症になるという話では決してありません。

それでも抑うつ経験がある人は、リスク要因を一つ抱えているということで、禁煙や食事、運動などに人並み以上に気を配ってもよいのかなと思いました。

【論文要旨】

抑うつ症状は認知機能の低下を引き起こすのではないかということが示唆されている。例えば基本的な抑うつ症状を示すものはそうでないものに比べて認知機能に大きな影響を及ぼすという研究が散見される。しかし他の研究はこのような結果を否定しており、抑うつ症状と認知機能の低下の関係については意見の一致を見ていない。今回1206名の非認知症高齢者を対象に抑うつ症状と知覚速度の関係について2年、8年、11年、15年のスパンで変化を追いかこの2つの指標の関係性について調査を行った。年齢、教育、基準となる総合的な認知能力と自己申告による健康状態により調整を行った後、因果関係を検討したところ抑うつ症状が知覚速度の低下を予測しうることが示された。

(出典)
Psychol Aging. Author manuscript; available in PMC 2012 Sep 1.
Published in final edited form as:
Psychol Aging. 2011 Sep; 26(3): 576–583.
doi: 10.1037/a0023313
PMCID: PMC3319759
NIHMSID: NIHMS303645
Depressive Symptoms Predict Decline in Perceptual Speed in Older Adulthood
Allison A. M. Bielak, PhD,1 Denis Gerstorf, PhD,2 Kim M. Kiely, BLib,1 Kaarin J. Anstey, PhD,1 and Mary Luszcz, PhD3
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「脳科学 リハビリテーション」より