肥満(特に内蔵脂肪)は認知症リスクを高める

takahiro

肥満(イメージ)

肥満、特に内臓脂肪の増加は、アルツハイマー病と脳血管性認知症のリスクを高めることが疫学研究で示され、カロリー制限はアミロイドベータ沈着の減少を促すことが動物実験で報告されています。やはり脳にも肥満は大敵のようです。

脂肪と肥満

肥満は万病のもとと言われます。昨今の健康指向の流れの中で、内臓脂肪やメタボリック症候群など話題には事欠きませんが、認知症との関係も調べられています。
わざわざ研究成果を示さなくても、肥満が認知症の危険因子であることは容易に想像がつきます。

なお、本記事での主役は、皮下脂肪ではなく、もっと奥の内臓の周りにある脂肪、内臓脂肪です。腸管や腎臓などの周り、そして腸を覆う網のような大網という組織に大量の黄色脂肪組織が付着します。本来、脂肪は飢餓に備えて栄養を蓄える組織です。

北海道のクマは秋にサケをたくさん食べて脂肪を増やし、冬眠に備えます。人間は美味しいもので脂肪を増やしても使う機会がない(運動しない)と、脂肪を貯めたまま肥満状態となってしまうわけです。

中年期の肥満がリスク

国立台湾大学のChiang CJ氏が2007年に発表した研究では、157名の認知症例と628名の対照群の肥満度を、BMI(body mass indexの略で、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で表します)を指標に検討しています。

BMIが20.5~22.9のBMI適正群に対して、BMIが20.4以下の痩せ群では認知症リスクが1.84倍に上昇し、23.0~25.4の体重多め群では1.87倍に上昇、25.5以上の肥満群では2.44倍に上昇するという結果でした。

しかし、別の疫学研究では、肥満で認知症(アルツハイマー病)のリスクが上昇するという結果が出なかったものもあります。このように結果が一定しないのは、肥満が認知症に直結するのではなく、中年期の肥満が数十年後の認知症に影響を及ぼすからだと推測されます。

内臓脂肪の蓄積

米国Kaiser Permanente Division of Research (アメリカ、カリフォルニア州オークランド) のWhitmer RA氏が2007年に発表した1万人を40歳代から平均36年間にわたって追跡調査した研究では、中年期のBMIが18.5~24.9の人を適正体重群とすると、BMIが30以上の肥満群ではアルツハイマー病のリスクが3.1倍に、脳血管性認知症のリスクが5.0倍にと著しく上昇していました。

また、BMIが25~30の過体重群でも、アルツハイマー病、脳血管性認知症ともにリスクが2倍に上昇していました。中年期の肥満が30~40年後の認知症のリスクになるというのはとても怖い話です。

この研究ではBMIという身体全体の肥満度を指標にしていますが、最近では内臓脂肪の増加のほうが認知症発症とより深く関係していると言われています。内臓脂肪細胞の放出するアディポネクチンなどの物質(サイトカイン)が動脈硬化に深く関係しているからです。

メタボリック症候群(米国基準)がアルツハイマー病発症に与える影響については、フィンランドのクオピオ大学Vanhanen M氏が2006年に発表したフィンランドの住民を調査した結果で、メタボリック症候群ではアルツハイマー病発症リスクが2倍以上に高まること、特に女性では影響が大きいことが示されています。

カロリー制限は脳の老化を遅らせる

次に動物実験に目を向けてみましょう。動物ではカロリーを制限すると、老化のスピードが遅くなるとことが示されています。アルツハイマー病のモデルマウスを通常の40%カロリーオフの餌(カロリー60%餌)で飼育すると、アミロイドベータ異常蓄積が半減したという報告があります。

脳のアミロイドベータ異常蓄積は脳老化の現れなので、老化のスピードを遅くするカロリー制限は、脳老化のスピードを緩めるのにも有効なようです。

(出典)
Midlife risk factors for subtypes of dementia: a nested case-control study in Taiwan.

Body mass index in midlife and risk of Alzheimer disease and vascular dementia.

Association of metabolic syndrome with Alzheimer disease: a population-based study.

Caloric restriction attenuates Aβ-deposition in Alzheimer transgenic models