心臓病リスクは認知機能低下にもつながる〜フラミンガム研究より

佐藤洋平

心臓
出典元:pixabay.com

有名なフラミンガム研究では、心臓疾患のリスク因子(糖尿病,喫煙,高血圧など)と脳の萎縮や認知機能低下との関連について10年間の追跡調査を行っています。結果は予想どおり、心臓病リスクは認知機能低下を引き起こすようです。

フラミンガム研究とは

脳や心臓、近代医療の歴史を書いた本をめくるとよく出てくるものにフラミンガム研究というものがあります。

これはアメリカ合衆国マサチューセッツ州フラミンガム市(人口28000人)の住民を対象にした大規模医学研究で、その時代に増え始めた心臓病がなぜ起こるかということについて、様々な因子(喫煙,教育,食事,飲酒,血中コレステロール値・・・・)がどのように影響するかを調査したものであり、時間を追ってずっと現在まで続いています。

この研究によって今まで明らかにされていなかった心臓病の危険因子が明らかになったり、多変量解析という解析方法もこのフラミンガム研究を行う中で開発されてきたという歴史があるようです。

心臓病のリスク因子は認知機能低下につながる

今回取り上げる論文は,このフラミンガム研究の一部をなすものです。

フラミンガム研究の対象者で認知症でない中年(55±10歳)1352名のMRI脳画像を撮り、心臓疾患のリスク因子(糖尿病、喫煙、高血圧など)と脳の萎縮、認知機能・実行機能の低下との関連について10年間の追跡調査を行ったものです。

結果は心臓病のリスク因子になるような糖尿病、喫煙、高血圧はすべからく10年後の脳萎縮、認知機能・実行機能の低下を招いていることが示されています。

やはり血糖値や血圧のコントロール、禁煙は大事ですね。

【論文要旨】

目的)本研究の目的は血管リスク因子と中年期でのMRI上の脳の老化および認知機能の低下との関連を明らかにすることである。

方法)フラミンガム研究の対象者の中から認知症ではない1352名を対象に研究を行った。血管リスク因子と大脳白質高信号体積、全脳体積、側脳室下角体積、ロジカルメモリ遅延再生課題、視覚遅延再生課題、トレイルメーキングテストの関係について10年間の追跡調査を行った。

結果)中年期の高血圧は大脳白質高信号ボリュームの進行を亢進させ、実行機能の低下を引き起こしていた。中年期の糖尿病と喫煙は海馬の萎縮を示す所見である側脳室下角体積の減少を早めていた。また中年期の喫煙は全脳体積の減少を早め、大脳白質高信号ボリュームの急激な変化と関連していた。中年期の糖尿病は実行機能の低下に大きく寄与しウエスト/ヒップ比は全脳体積の減少と関連していた。経時的な脳の構造的変化は記憶力と実行機能の低下と関連していた。

結論)中年期の高血圧、喫煙および糖尿病は10年後の血管性脳損傷の発症率を高め、全脳および側頭葉の脳萎縮を促し,実行機能の低下を引き起こすことが示された。

http://www.stat.wmich.edu/naranjo/articles/bp-brain.pdf
Neurology. 2011 Aug 2; 77(5): 461–468.
doi: 10.1212/WNL.0b013e318227b227
PMCID: PMC3146307
Midlife vascular risk factor exposure accelerates structural brain aging and cognitive decline
S. Debette, MD, PhD, S. Seshadri, MD, A. Beiser, PhD, R. Au, PhD, J.J. Himali, MS, C. Palumbo, PhD, P.A. Wolf, MD, and C. DeCarli, MDcorresponding author
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(出典:脳科学リハビリテーション)