2025年、日本は本当に“認知症パンデミック”を迎えるのか?

nounow編集部

認知症パンデミック(イメージ)
出典元:pixabay.com

団塊の世代がすべて75歳を迎える2025年、ある専門家はこのままいけば認知症になっても行き場のない徘徊者が都市に溢れる“認知症パンデミック”になると指摘しています。根本治療薬の開発を待つ以外に私たちにできることとは!?

認知症有病率約15%、このままいけばパンデミックに!?

日本における認知症患者は2012年段階で約462万人と推定され、MCI(軽度認知障害)の方も約400万人いるといわれています。

また、このまま各年代の認知症有病率が一定で推移した場合、2025年段階で認知症患者だけでなんと800万人を超えると推計され、都市が徘徊する人であふれるという“認知症パンデミック”が起きるという懸念も示されています。

「国は各種病床を減らそうとしていますが、手をつけていないのが精神科の病床です。2014年のOECD(経済協力開発機構)の調査で、日本はその他の加盟国の4倍近くの精神病床数でした。約34万の病床があって、32万人が入院しています。入院の必要性が低くても、行く場所がないからとどまっている人も多い。その中でも増えているのが、認知症が悪化して自傷や他傷行為などが出てきたという人たちで、精神病院の中の認知症病棟に入院し、長くとどまっている。その他の病床・施設が減らされる中で、2025年には認知症が悪化し、行き場は精神病院しかないというケースが増えてくる」

「700万人が行き場を失い、都市を徘徊する。私はこれを認知症パンデミックといっています」(国際医療福祉大学大学院教授で医師の武藤正樹氏)

(引用)週刊ポスト2016年9月16・23日号

確かに、2025年には団塊の世代がすべて75歳以上を迎えることになります。認知症有病率は高齢になるにしたがって上昇するため、今のままの有病率でいけば前出の武藤氏の指摘通り、都市が徘徊者で溢れるということも現実味を帯びてくるといえます。有病率は今のまま推移するのでしょうか?

イギリスでは認知症有病率が下がっているという事実

2013年にイギリスの医学専門誌『Lancet誌』に発表されたある研究が、関係者に衝撃を与えました。ケンブリッジ大学など名だたる学術・研究機関が共同で行った「CFAS研究」という20年間の比較研究において、認知症の有病率が下がったと報告されたのです。

1991年に8.3%だった認知症有病率(65歳以上人口の認知症有病の割合)が、2011年では6.5%と減少していたのです。これは減少率で計算すると約24%にもなります。

具体的にみていくと、女性の有病率は高いままである一方、男性は低くなっている点や、介護施設に入居する高齢者での有病率は上昇気味であるなど幾つか特徴的な傾向が見えます。また、比較的新しく形作られた地域では有病率が低いとのことです。

イギリスが特に医療レベルが飛びぬけて高い訳ではありませんが、2005年あたりから認知症を減らすために様々なことに取り組んだ成果ではないかと言われています。その一例として挙げられるのは「心臓病の治療、心血管リスクの予防、減塩」です。心臓病の治療が認知症の予防に繋がるという標語をつくり、禁煙キャンペーンを展開し、業界団体にも協力を仰いで10%の減塩を実現したのです。

結局は地道な政策が功を奏したわけで、日本でも近年健康寿命を延ばすために同様のことに取り組んできているため一定の成果はあると考えられます。しかし日本の団塊の世代はそのボリュームが大きいだけに、さらなる効果的な予防策が期待されます。

期待される創薬。それ以外にもわかってきた予防のポイント

先日のnounowの記事で世界初の認知症根本薬の開発について触れました(「速報!認知症の免疫療法でアミロイドベータ抑制に成功〜初の認知症根治薬になるか」)が、その行く末はまだわかりません。

認知症を予防するためには、話題になっているものを食べたり飲んだりするだけではなく、生活習慣において“脳の認知機能のために良いと示唆されていること”(エビデンスがあること)に総合的に取り組むことが重要であるとわかってきました。

新薬開発の実現に期待しながらも、私たちも常に心に問いかけていきましょう。

「脳に良い食生活できてる?」「運動不足になっていないかな?」 

その地道な心がけが、認知症パンデミックを防ぐことに繋がるのではないでしょうか。

(出典)New Estimates Suggest That Prevalence Of Dementia Is Falling In UK(Published: Tuesday 16 July 2013)

A two-decade comparison of prevalence of dementia in individuals aged 65 years and older from three geographical areas of England: results of the Cognitive Function and Ageing Study I and II Fiona E Matthews, Antony Arthur, Linda E Barnes, John Bond, Carol Jagger, Louise Robinson, Carol Brayne, on behalf of the Medical Research Council Cognitive Function and Ageing Collaboration