血糖値が高いことはアルツハイマー病のリスク 

大塚真紀

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出典元:pixabay.com

血糖値が高くなる糖尿病と認知症、血糖値とアルツハイマー病との関連を長期にわたって調査をしてきた久山町研究の一つについてご紹介します。

「血糖値が高い」とは

今まで健康診断や病院の検査で、血糖値が高いと指摘されたことがある方もいるかもしれません。血糖値が高いとは、血液中に過剰な糖分が存在している状態で全身の血管に悪影響を与える可能性があります。怖いことに、血糖値が高くても自覚症状をわかりづらいことが多く、なかには気付かずに長い間放置してしまう方もいます。血糖値が高い状態を放置しておくと、徐々に全身の血管がぼろぼろになり、失明や腎不全、心臓病、脳卒中などの命に関わる病気を引き起こす可能性があります。

日本でも食生活の欧米化や運動不足などにより糖尿病を発症している方が増加しています。厚生労働省が行っている国民健康・栄養調査によると、2014年のデータでは糖尿病が強く疑われる人の割合は、男性で15.5%、女性で9.8%といわれています。また、糖尿病は50歳を超えると増加傾向になり、70歳以上では男性の4人に1人(22.3%)、女性の6人に1人(17.0%)が糖尿病とみられています。

糖尿病と認知症の関係

糖尿病と認知症に関する研究報告は、今まで世界各国から発表されています。
例えば、糖尿病は軽度認知障害の発症リスクを上昇させることhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23562428、糖尿病と診断された方においては血糖値の変動が大きいほど認知症を発症させやすいことhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27591029、などが明らかになっています。一方で、糖尿病と診断されていない方を対象にした研究もあります。糖尿病と診断されていなくても、5年間の平均血糖値が高い人の方が認知症の発症リスクが上昇したそうです。具体的には、血糖値の平均値が100mg/dLに対し、105mg/dLの場合には10%、115mg/dLの場合には18%リスクが上昇することがわかっていますhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23924004

今までの研究結果をふまえて、米国のアルツハイマー協会はアルツハイマー予防のためによい生活習慣を10項目挙げています。その中にも「肥満、高血圧や糖尿病の十分な管理」があることからわかるように、糖尿病とアルツハイマー病には関連があるといえます。

血糖値が高い期間が長いほど海馬が萎縮する

日本の研究チームは、血糖値が高い期間が長いほど、記憶をつかさどる海馬が萎縮し、アルツハイマー病のリスクになることを2016年7月に「Diabetes Care」誌に発表しました。

今回の研究は、福岡県にある久山町の住民を対象にした有名な久山町研究の1つで、今までも脳卒中や心血管疾患、認知症に関する多くの貴重な日本人のデータを報告しています。

本研究では、65歳以上の久山町住民1238名を対象にして血糖値の測定と脳のMRI検査を行いました。脳のMRIでは、脳の全体の容積、記憶をつかさどるといわれる海馬の容積などを測定しました。アルツハイマー病では、海馬が萎縮することが知られています。全体の23%、286名において血糖値が高い糖尿病と診断されました。

食後2時間の血糖値が高い人、また血糖値が高い状態が長く続いている人は、そうではない人に比べて海馬の萎縮が進んでいることが脳の画像検査によって明らかになりました。特に、糖尿病と診断されて17年以上経過している人は、そうではない人に比べて明らかな萎縮を認めました。

今まで多くの研究で、アルツハイマー病や認知症と血糖値の関連が指摘されてきました。しかし、今回の研究のように実際に脳の画像検査を使用して検討したデータは珍しく貴重だと考えられています。
また、空腹時の血糖値よりも食後の血糖値の方が脳の萎縮と関連していることも示すことができました。いくつかの既存の報告で、血糖値と認知症の関連がないと結論付けているものもありますが、研究グループはそれらが食後血糖を対象にしていないからではないかと指摘しています。
今後、食後血糖とアルツハイマー病に関する大規模な研究が日本だけでなく、世界で行われることが期待されます。

<参考論文・参考資料>
Diabetes Care. 2016 Sep;39(9):1543-9. doi: 10.2337/dc15-2800. Epub 2016 Jul 6.
Association Between Diabetes and Hippocampal Atrophy in Elderly Japanese: The Hisayama Study.
Hirabayashi N, Hata J, Ohara T, Mukai N, Nagata M, Shibata M, Gotoh S, Furuta Y, Yamashita F, Yoshihara K, Kitazono T, Sudo N, Kiyohara Y, Ninomiya T.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27385328