体重の増減が激しい人はアルツハイマー病のリスク

大塚真紀

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出典元:pixabay.com

肥満の基準を測る指数として用いられるBMI。このBMIの数値と認知症のリスク、数値の変化率とアルツハイマー病のリスクについての研究をご紹介します。

肥満が体におよぼす影響

肥満が健康によくないことを知っている方も多いかもしれません。肥満の基準として用いられる指標として、体格指数(Body Mass Index,BMI)があります。BMIは体重(kg)÷[身長(m)×身長(m)]の式で計算でき、肥満は25以上と定義されています。しかし、最近ではBMIが25未満でも内臓の周りに脂肪がついている隠れ肥満の危険性も指摘されており、BMIだけでは肥満の有無は判断できない場合もあります。

肥満がなぜ健康によくないかというと、内臓脂肪の蓄積によって高血圧や糖尿病、心筋梗塞の原因となる物質が放出され、いわゆる生活習慣病の発症リスクになるからです。他にも肥満によって睡眠時無呼吸症や腰痛など、毎日の生活に支障をきたすような病気を誘発します。高血圧や糖尿病、心臓病は認知症の発症に関連していることがわかっています。このことからも、肥満は認知症の発症リスクに関連することが推測されます。(http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/obesity/pamph39.html

体重と認知症の関係

体重と認知症の関係を検討した報告はすでにいくつかあります。

2007年に台湾の研究チームは、中年期のBMIが低いやせている群で認知症リスクが1.84倍、BMIの高い肥満群で認知症リスクが2.44倍と報告しています。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17623813
つまり中年期にやせ過ぎ、または肥満だと数十年後に認知症を発症するリスクが高いということです。やせているのに、なぜ認知症を発症するのかと考える方もいるかもしれません。しかし、今までの他の研究でもBMIが標準より低いと病気にかかりやすかったり、寿命が短いことが明らかになっており、BMIが正常範囲内であれば、ある程度の脂肪は健康を保つために必要だと考えられています。

他にも、アメリカの研究チームから、中年期のBMIが30以上の肥満の方において、30-40年後の認知症リスクが約2倍になることが報告されています。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17430231)

体重の増減が激しい人はアルツハイマー病のリスク

韓国の研究チームは軽度認知障害の方において、1年間の体重変化が大きい場合にはアルツハイマー病を発症するリスクが高いことを2015年10月に「Journal of Alzheimer’s Disease」誌に発表しました。

研究チームは、軽度認知障害747名に対して、研究開始時のBMI、その後のBMIの変化について解析を行い、アルツハイマー病の発症リスクにどのように影響するか検討しました。

正常体重群と比較すると、研究開始時に低体重の方においてアルツハイマー病に進行するリスクが高いことがわかりました。一方で、研究開始時に肥満の方は逆にアルツハイマー病に進行するリスクが低いことがわかりました。具体的には、低体重群では正常体重群に比べて1.89倍、アルツハイマー病への進行リスクが高かったそうです。

また、研究チームは研究期間中にBMIが減少傾向だったグループ、増加傾向だったグループに分けて解析も行っています。1年間の平均BMI変化率は4%としています。すると、BMIが減少傾向でも増加傾向でもアルツハイマー病を発症するリスクが高いことが明らかになりました。BMIの変化率が少なかったグループに比べて、BMIが減少傾向だったグループはアルツハイマー病発症リスクが2.29倍、増加傾向だったグループにおいては3.96倍と最も高いリスクとなりました。

今までも体重とアルツハイマー病に関する研究報告はありましたが、今回の研究で興味深い点は、体重変化に注目したことといえます。今回の研究結果から、体重の増減が激しいことはアルツハイマー病の発症リスクになることがわかりました。

今回は対象となっているのが軽度認知障害の方なので、今後健康な方を対象にした大規模な研究が行われることが期待されます。

<参考論文>
J Alzheimers Dis. 2015;49(2):483-91. doi: 10.3233/JAD-150556.
Unstable Body Mass Index and Progression to Probable Alzheimer’s Disease Dementia in Patients with Amnestic Mild Cognitive Impairment.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26484923)