赤ら顔の人は認知症発症リスクが高い可能性

大塚真紀

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出典元:pixabay.com

神経の炎症と認知症の関連を調査した日本の理化学研究所が発表した論文と赤ら顔の原因となる慢性の炎症性皮膚疾患と認知症リスクの関連について、デンマークの研究チームが発表した論文についてご紹介します。

酒さとは

酒さとは、アトピー性皮膚炎と似たような皮膚症状の1つで顔にほてりや赤みが生じて赤ら顔になる皮膚の慢性炎症性疾患です。特に20-50歳代の女性に多く見られるといわれています。酒という字が入っていますが、アルコールとは関係ありません。

治療方法は、抗菌薬の内服やワセリンの塗布などになります。酒さと診断された場合には、顔に刺激を与えることを避けるようにした方がよいとされています。皮膚の赤みが増すので、洗顔の時も力を入れずに優しく洗い、長時間の入浴や暖房の効いた温かい室内に長くいること、飲酒、喫煙をしないように心がけます。紫外線の刺激も悪化の原因になるので気を付けるように指導されます。

炎症と認知機能障害

酒さと認知機能は、あまり関係ないように思われる方もいるかもしれません。しかし、以前から認知症の原因として神経の炎症が関与していることが指摘されており、慢性の炎症性皮膚疾患である酒さとの関連はあるかもしれません。

日本の理化学研究所(以下、理研)が行った研究によると、認知症モデルマウスにおいて脳神経の炎症があることを明らかにしています。今まで認知症に対して抗炎症薬が有効とされる研究結果も出ていましたが、抗炎症薬で抑えられる物質と認知症における神経の炎症の関係は明らかになっていませんでした。

しかし、理研が行った研究では、認知症モデルマウスにおける脳内でアミロイドタンパクの増加とアミロイドタンパクの周囲を炎症物質が囲んでいることを画像によって客観的に初めて明らかにしました。アミロイドタンパクとは、アルツハイマー病の原因になると考えられている脳内に蓄積する異常タンパクのことです。
出典:理科学研究所プレスリリース「認知症モデルマウスの神経炎症を可視化」

今回の研究から、認知症に神経の炎症が関わることが客観的に明らかにされたといえます。では次に、炎症性の皮膚疾患である酒さと認知症の関連について2016年に発表された報告をみてみましょう。

酒さは認知症発症のリスクを予測する

デンマークの研究チームは、酒さのある高齢者において認知症の発症リスクが高くなる可能性があることを2016年7月に「Annals of Neurology」誌に発表しました。

酒さは、マトリックスメタロプロテアーゼや抗菌性ペプチドの上昇を伴う、慢性の炎症性皮膚疾患として認識されています。アルツハイマー病などの認知症において、神経の炎症が原因である可能性が以前からいわれており、研究チームは炎症性の皮膚疾患である酒さが認知症となんらかの関連があるのではないかと注目し、今回の研究を行いました。

1997年から2012年までの18歳以上のデンマーク市民を対象として、酒さと認知症の発症に関して解析を行いました。
対象となった人は、559万1718例で、酒さと診断された人は8万2439例でした。研究期間中に認知症を発症した患者は9万9049例で、その中で2万9193例はアルツハイマー病と診断されました。

結果をみてみると、酒さと診断された患者の場合、健常な人に比べて認知症の発症リスクが7%、アルツハイマー病発症リスクにおいては25%も高くなることがわかりました。つまり、今回の研究から酒さがある患者において認知症を発症する可能性が高いことが明らかになりました。

しかし、酒さがあるからといって必ずしも認知症を発症するとは限らないこと、デンマーク人だけに注目して行われた研究であることは注意しなければいけません。今回の結果で、酒さと認知症の関連について見識が得られたことは確かですが、日本人やその他の国民においても同じ傾向が見られるかどうか今後検証されることが期待されます。

<参考論文・参考資料>
Ann Neurol. 2016 Jun;79(6):921-8. doi: 10.1002/ana.24645. Epub 2016 Apr 28.
Patients with rosacea have increased risk of dementia.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27121663