認知症発症率は年々低下している?〜英国に見る認知症発症率の変遷

佐藤洋平

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出典元:pixabay.com

英国において認知症有病率が低下してきているという非常に希望がもてる研究をご紹介します。国を挙げて行っている予防的な取り組みが功を奏しているようです。

コホート効果とは?

疫学研究の専門用語でコホート効果というものがあるそうです。
これはコホート(ある特定の枠組みで定義された集団)によって、ある疾患の発症率が変わったりする効果だそうですが、肝臓がんでいえば、肝炎が大流行した歳に若かった年代は肝がんが高かったり、終戦直後の世代は喫煙開始が若年で肺がん発症率が高いという世代間の疾患発症率の違いとして示されるようなもののようです。

このように疾患の発症率に影響を与えるコホート効果ですが、果たして認知症の発症にコホート効果は認められるのでしょうか。

英国では認知症発症率が低下している

今回取り上げる論文は、英国で認知症の発症率が20年間にどのように変化したか、年代間によるコホート効果を検証したものです。

研究では1989-1994年の高齢者(65歳以上,7635人)と、2008-2011年の高齢者(65歳以上,7796人)で認知症の有病率を調査しているのですが、これには明らかな世代間の違いが認められました。

1989-1994年の調査結果からの推定では2011年には英国全体で認知症患者は884,000人(65歳以上の8.3%)になると見積もられていたものが、2011年の調査結果からは670,000人(65歳以上の6.5%)と明らかな低下が見られたそうです。

このような年代によるコホート効果が見られた背景として,近年の予防的な政策などが効をなしているのではないかということが述べられており、やはり予防的な取り組みにはそれなりの効果というものがあるのだなと思いました。

論文要旨

・背景
認知症の有病率を把握することは世界的に重要である。将来のケアの提供を計画するためには認知症の有病率の見積もりが必要であるが、多くのエビデンスは数十年前のデータに基づいている。我々は、過去20年間に、英国の元の研究領域の3つで、医療研究評議会の認知機能と老化研究(MRC CFAS)で使用されているのと同じアプローチと診断方法を繰り返し、認知症の有病率が変化したかどうかを調査することを目的とした。

・方法
1989年から1994年にかけて、MRC CFASの調査官は、イングランドとウェールズの6つの地理的に定義された地域で、65歳以上の母集団におけるベースラインのインタビューを行った。

認知症罹患率を推定するために使用されたアルゴリズム診断(コンピュータ支援タクソノミーのための老齢精神状態自動化老年試験)のためのデータを得るために、スクリーニングおよび診断評価後の2段階プロセスを使用した。

ケンブリッジシャー、ニューキャッスル、ノッティンガムの3つの地域からのデータがCFAS Iに選ばれた。

2008年から2011年の間に、CFAS II研究のための同じ3つの分野で新しいフィールドワークが行われた。

CFAS IとCFAS IIの両方について、地理的および世代間の比較のための力を提供するために、65歳以上の2500人を含む必要があった。

サンプリングは、年齢層(65-74歳対75歳以上)に従って層別化した。

CFAS IIは、スクリーニングと評価が1つの段階に統合されたことを除いて、CFAS Iと同じサンプリング、アプローチ、および診断方法を使用した。

累積推定値は、サンプリング設計および非応答を調整するために逆確率重み付け法を用いて計算された。

十分な可能性のあるベイジアンモデルを有益な無応答を調べるために使用した。

・所見
ケンブリッジシャー、ニューキャッスル、ノッティンガムでは65歳以上の7635人がCFAS I(9602人にアプローチし、80%の回答)でインタビューされ、1457人が診断的に評価された。

同じ地域では、CFAS IIの調査員は7796人(14242人がアプローチし、242人が限られた虚弱情報で56%の回答)をインタビューした。

CFAS Iの結果からは、2011年の人口に標準化された65歳以上の人々の認知症罹患率は8.3%(884 000)と予測されたが、CFAS IIの結果からはより低く見積もられ(6.5%; 670,000)、1.8%の減少を示した。

感度分析は、これらの推定値が応答の変化に対して頑強であることを示唆している。

・解釈
この研究は、コホート効果が認知症の有病率に存在するというさらなる証拠を示している。

後で生まれた集団は、過去世紀以前に生まれた集団よりも認知症のリスクが低い。

http://www.sciencedirect.com/…/article/pii/S0140673613615706
Lancet. 2013 Oct 26; 382(9902): 1405–1412.
doi: 10.1016/S0140-6736(13)61570-6
PMCID: PMC3906607
A two-decade comparison of prevalence of dementia in individuals aged 65 years and older from three geographical areas of England: results of the Cognitive Function and Ageing Study I and II
Fiona E Matthews, PhD,a Antony Arthur, Prof, PhD,b Linda E Barnes, RGN,c John Bond, Prof, BA,d Carol Jagger, Prof, PhD,d Louise Robinson, Prof, MD,d Carol Brayne, Dr Prof, MD,c,* and on behalf of the Medical Research Council Cognitive Function and Ageing Collaboration
Summary
コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション