男性ホルモン「テストステロン」は認知機能の改善に効果がないとの結果

工樂真澄

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出典元:pixabay.com

「テストステロン」は代表的な男性ホルモンで、胎児期の性決定や思春期の性成長に重要な役割をしています。以前から、加齢によるホルモン分泌の減少や、前立腺がん治療での男性ホルモンの抑制により、認知機能に衰えが見られることが報告されていました。そのため、男性ホルモンと認知機能の関係については、たびたび論じられています。今回は、テストステロンが認知機能に及ぼす影響を調べた研究を、ご紹介します。

男性らしさを作り出すホルモン

テストステロンは胎児期に分泌された後、いったんおさまり、思春期になって再び分泌されるようになります。その結果、男の子では声変わりが起こったり、ひげが生えてきたりするなど、男性としての発育が促されます。思春期を過ぎてもテストステロンは分泌され続けますが、加齢とともに徐々に減少していきます。更年期障害は女性ではよく知られていますが、男性にも存在します。加齢とともに男性ホルモンの分泌が低下することで、うつ症状や疲労感などをもたらし、性機能にも障害が表れます。そのため、男性の更年期障害の治療にテストステロンを使うこともあります。

アメリカ国立衛生研究所(NIH)にある老化研究所のResnick博士らは、テストステロンの認知機能改善効果について調べ、2017年に発表しました。実験に参加したのは65歳以上の男性788人です。その中でも、加齢による記憶力の低下が確認できた493人(平均年齢72歳)については、詳しい解析が行われました。被験者は毎日、ゲル剤を塗るように指示されました。被験者の半分に与えられていたのは、低濃度のテストステロンを含んだゲル剤です。比較対照群となる残り半分の被験者に与えられたゲル剤は疑似薬です。投与期間は1年で、期間終了後に言語や記憶、実行機能などの認知機能を測るテストを行い、2つのグループ間で結果を比較しました。

テストステロンゲルを与えられていたグループは、血漿のテストステロンレベルが上昇し、性機能の改善などの効果が見られました。しかし、認知機能に関しては2つのグループ間で有意な差は確認できず、テストステロンは高齢男性の認知機能の改善には効果がない、と結論づけられました。

性ホルモンは認知機能に影響するのか

nounowでは以前、女性ホルモン療法が認知機能に及ぼす影響についてご紹介しました(ホルモン補充療法は認知機能の敵か味方か?)。女性の場合は、ホルモン療法を始める年齢や閉経のタイミングで、認知機能への効果が変わるとされています。今回ご紹介した研究では、認知機能の改善をもたらす効果は確認できませんでしたが、男性の場合も投与期間やホルモン療法を開始する年齢を変えることで、効果が出る可能性もあります。いずれにせよホルモン療法は良くも悪くも体への影響が大きいため、認知機能の改善に使われるためにはさらなる検証が必要だと考えられます。

Testosterone Treatment and Cognitive Function in Older Men With Low Testosterone and Age-Associated Memory Impairment.
Resnick SM et al. JAMA. 2017 Feb 21;317(7):717-727.
Effects of Testosterone Treatment in Older Men.
Snyder PJ et al. N Engl J Med. 2016 Feb 18;374(7):611-24.