フィンガー研究が示した総合的な認知症予防の有効性

nounow編集部

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出典元:pixabay.com

認知症予防で画期的といわれるフィンランドのフィンガー研究。運動や食事、脳エクササイズ、血圧管理などの総合的な介入で認知症発症リスクを顕著に下げました。日本でも同様のさらに詳細な研究が計画されているようです。

フィンガー研究とは

認知症予防に関する研究で有名なものの1つに、NHKスペシャル「シリーズ認知症革命」でも取り上げられたフィンランドのフィンガー研究があります。

フィンランドのカロリンスカ研究所は、2009年9月7日から2011年11月24日までに、60-77才のフィンランド人1,260名をランダムに介入群と対照群の2群に分け、対照群には一般的な健康アドバイスを、介入群には、2年間以上続けて血圧の管理などにあわせて健康的な食事、筋トレ・有酸素運動、脳エクササイズなどの総合的な介入を行いました。

具体的には 食事に関しては野菜や果物、全粒穀物製品や低脂肪乳、肉、最低週に2日は魚を消費することなどが推奨されました。またアルコールや糖、カロリーの摂取を制限しました。

運動は、週1〜3回の筋力トレーニング、週2〜5回の有酸素運動などを行いました。

脳エクササイズは、ワーキングメモリー、エピソード記憶、メンタルスピードを鍛えるトレーニングを週3回 1回15分程度行いました。

また、医師や看護師によって診察や身体計測を行い、生活習慣の改善指導などを行いました。

結果、参加者の認知機能を標準検査(NTB)で調べた結果、全体的なスコアは、介入群が対照群に比べて平均25%高く、各機能のスコアでは、より大きな差異がみられたものもあり、実行機能スコアは83%、処理速度スコアは150%、記憶スコアでもポストホック分析で差がみられたとのことです。

また、ポストホック分析によると、予防的介入を行わなかった対照群は、介入群と比べて認知症になるリスクが1.3倍増加することが示されました。

この大規模で長期的なランダム化比較試験の結果は、総合的な介入が、一般人の高リスク高齢者の認知機能を改善または維持することができることを示唆している、としています。

認知症は多因子疾患であり、その改善のためには多因子介入が必要

主任研究者のキビペルト教授は

多くの先行研究で高齢者の認知機能の低下と食事、心臓の健康、運動などの因子に関連がみられることが報告されている。我々の研究は初の大規模ランダム化比較試験によって、認知機能の低下を予防できると思われる複数のリスク因子に焦点をあてた介入によって高齢者の認知症発症リスクが低下することを示している。

「認知症は多因子疾患であり、その改善のためには多因子介入が必要である」という仮説は証明され、今後、フィンガー研究が認知症予防の新しい、現実的なモデルになる

としています。

運動だけ、脳トレだけなど単一のものではなく、運動や食事、認知機能トレーニングなどを総合的に組み合わせた認知症予防の取り組みがこれからさらに増えていくでしょう。

長寿研が取り組む日本版フィンガー研究

国立長寿医療研究センターは、フィンガー研究のような大規模な認知症予防研究に取り組む予定です。

国立長寿医療研究センターの鳥羽理事長は

「フィンガー研究は認知症の前段階といわれる軽度認知障害(MCI)の一歩手前の人を対象に行われました。また、遺伝的背景がどう関与していたかや、効果が見られた人にどんな特徴があったかといった細かいことまではここでは調べられていません。そこで、すでにMCIになった人を対象に細かいことまで調べ、こういう危険因子を持った人はこういう対策をとるべきといった、個々人の特性に合わせた認知症の予防&治療プランの確立につなげていこうというのが私たちの試みです」

と述べています。
(日経Gooday 2016/2/16 認知症大国・日本で始まりつつある研究とは

フィンガー研究よりさらに詳細に、遺伝子や個人の特徴などのデータをとった大規模な研究になるようで、遺伝子などによって予防や治療方法をパーソナライズすることができるようになると画期的です。

また、40歳以上の健常者を対象とした認知症予防に関する数万人規模の調査を、国立精神・神経医療研究センター、国立長寿医療研究センター、日本医療研究開発機構が開始し、2016年7月5日から登録受付を開始しています。

あたまの健康応援プロジェクトIROOP(アイループ)

IROOPは40歳以上の健常者を対象に5年で4万人規模を目指すとしています。登録すると、基本情報を入力したのち、病歴や睡眠、食生活など約160項目のアンケート(所要時間約20分)にオンラインで回答し、認知機能検査である「IROOPあたまの健康チェック」(所要時間約15分)を電話で受けます。そして登録から6ヵ月ごとに定期アンケート(所要時間約20分)に回答し、認知機能検査を受けることができるとのことです。

これら大規模な調査により有効な認知症予防法が明らかになっていくことが期待されます。

参考論文:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25771249