脳波でMCIをスクリーニング

工樂真澄

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出典元:pixabay.com

MCIのスクリーニング方法として様々なものがでてきていますが、脳波で早期のMCIを発見できるとする研究についてご紹介します。

MCIとは

MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)は認知症の一歩手前の段階といわれ、日常生活にとくに支障はないものの、放っておけば認知症に移行する確率が高くなります。しかし、この時期に適切な治療や生活改善を行うことで、認知症への進行を遅らせることができるといわれます。そのため、早い段階でMCIを発見する方法が模索されています。今回は、脳波から簡便に早期のMCIを発見する方法についての研究をご紹介します。

言語処理過程でおこる脳波に現れる兆候

MCIでは、脳の聴覚と言語をつかさどる領域に異常が出ることはわかっていましたが、これがどのような症状を生み出すかについては、詳しくわかっていませんでした。2017年アメリカのメンフィス大学のBidelman博士らのグループは、言葉を理解しようとする間に生じる脳波を測定することで、MCIの兆候を見つけだすことができる可能性を示しました。会話をしているときや、テレビやラジオを聞いているときなど、言葉を理解しようと脳が働いたときには、特有の脳波が起こります。博士らは新たな電気生理学的手法をもちいて、脳幹とよばれる部分と大脳の言語処理に関わる領域に生じる脳波を測定しました。

まず、実験に参加した52歳から86歳までの23人を、認知機能テストの成績にしたがって2つのグループに分けます。それぞれにビデオを見てもらい、その間の脳波を測定しました。その結果、2つのグループ間では、言語を聞いた時に起こる神経活動に違いがあることがわかりました。MCIと診断された人たちでは、そうでない人たちに比べて、脳幹の神経が過剰に反応し、また大脳の言語に関する領域の神経細胞の反応が小さくなっていました。このような神経活動の異常は、将来的にコミュニケーションの障害になると考えられます。さらに、MCIと診断された人の8割がこれらの脳波を示しており、脳波測定による診断が精度の高いものであることが示されました。

知らず知らずのうちに低下する認知機能

健康な脳であれば、年をとっていても、注意を向けている音だけに集中して脳が処理を行います。しかし、MCIの脳では抑制が効かず、他の音に対しても神経が過剰に反応してしまうようです。今後は、この症状が認知障害のごく初期に限られたものなのか、または認知症発症者にも見られるものなのかを調べる必要があります。

認知症の症状というと、忘れっぽくなった、思い出せないなど、記憶力ばかりが重視されがちですが、今回ご紹介した論文でも明らかなように、話し言葉を処理する力や、コミュニケーションにも影響がおよびます。この論文のように、10分程度の脳波測定でMCIの予兆が発見できるようになれば、認知症患者の増加を食い止めることに大きく貢献することでしょう。

ご紹介した論文
Mild Cognitive Impairment Is Characterized by Deficient Brainstem and Cortical Representations of Speech.
Bidelman GM, et al.J Neurosci. 2017 Mar 29;37(13):3610-3620.