LEDライトがアルツハイマー病の治療になる可能性

大塚真紀

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出典元:pixabay.com

消費電力の低さと、節電効果の高さから身近な存在となったLEDライトですが、このLEDライトがアルツハイマー病の治療として活用できる可能性を明らかにしたマウスの研究論文についてご紹介します。

LEDとは

LEDとは、Light Emitting Diode(ライト・エミッティング・ダイオード)のことで、日本語では発光ダイオードといいます。LEDはパソコンやスマートフォンのディスプレイの分野や照明を中心に使用されています。LEDは、寿命が長いことや消費電力が白熱電球の1/10であること、二酸化炭素の排出量が少ないことなどから環境に優しく、節電効果もあると考えられています。しかし、パソコンやスマートフォンで使用されているLEDディスプレイやLED照明にはブルーライトとよばれる青色光が多く含まれており、健康への影響も懸念されています。

LEDライトに含まれるブルーライトの健康への影響

ブルーライトは、波長が380-500nmの青色の光のことです。目で見ることのできる光の中でも強いエネルギーをもっているといわれています。そのため、目の表面にある角膜や水晶体などで吸収されずに網膜まで到達するといわれています。

ブルーライトは私たちの生活を便利にしましたが、長時間浴びていると目や体に悪影響を及ぼすと考えられています。厚生労働省のガイドラインでは、1時間パソコンやスマートフォンなどのデジタルディスプレイ機器による作業を行った後は15分間、休むことが推奨されています。寝る直前までパソコンやスマートフォンを見ているとブルーライトの影響で眠りが浅くなることもわかっています。

一方で、最近の研究では昼に適度なブルーライトを浴びることはよいといわれています。私たちの体にはサーカディアンリズムといって24時間周期で昼と夜を作り出す生理的なリズムがあります。サーカディアンリズムによって、夜は眠くなり、一定時間眠ると起きるようになっています。時差ぼけは、サーカディアンリズムが乱れて起きるものです。

また、体温や血圧、ホルモン分泌などがサーカディアンリズムによって変動しています。ブルーライトを昼間に十分に浴びて、夜は浴びないようにすることはサーカディアンリズムを整えるためによいといわれています。スマートフォンの中には、夜間になるとブルーライトの量を減らすモードがあるものもあります。
つまり、ブルーライトは浴びすぎるのはよくないですが、適度に休んだり、夜や寝る直前は浴びないように配慮すればよいといえます。

LEDライトがアルツハイマー病の治療になる可能性

アメリカの研究チームは、マウスを用いた研究でLEDライトをあてるとアルツハイマー病を改善する可能性があることを2016年12月に「Nature」誌に発表しました。

アルツハイマー病をはじめとする脳の病気では、脳波に乱れを生じることがあります。そのことから、研究チームはアルツハイマー病モデルのマウスに対し点滅するLEDライトをあてることで脳波を誘導できるのではないかと考えました。

研究チームが、アルツハイマー病モデルのマウスにLEDライトをあてたところ1時間後にはアルツハイマーの原因と考えられているアミロイドβ蛋白の量が記憶をつかさどる海馬とよばれる部分において40-50%減少していることを確認しました。また、1週間後にもアミロイドβ蛋白の減少を認めました。つまり、持続的な作用が期待できると考えられました。

今回の研究から、脳内の電気活動パターンをLEDライトで改善することによってアルツハイマー病の治療の1つとして活用できる可能性が明らかになりました。しかし、マウスを対象とした研究であり、アルツハイマー病の治療として実用化できるかはまだわかりません。今後、ヒトを対象とした研究が行われることが期待されます。

<参考論文・参考資料>
Nature. 2016 Dec 7;540(7632):207-208. doi: 10.1038/540207a.
Neurodegenerative disorders: Neural synchronization in Alzheimer’s disease.
Aron L1, Yankner BA1.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27929001