アルツハイマー病方程式

佐藤洋平

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ニューヨーク在住の高齢者の大規模追跡調査による、アルツハイマー病の発症リスク要因の重み付けに関する研究をご紹介します。

アルツハイマー病発症リスク要因の重み付け

アルツハイマー病というのは中々に複雑な病気で、骨折や火傷のように単純な原因で発生するわけではなく、発症に至るには遺伝子やら生活歴、教育、体型様々な要因が絡んでいるようですが、これらをひとまとめにして一つの計算式として発症リスクを計算することはできるのでしょうか。

今回取り上げる論文は、アルツハイマー病の発症リスクについて各要因の重み付けを行ったものです。

この研究ではニューヨークに住む65歳以上の高齢者4182名を対象に、平均4年の追跡期間を経て、各要因のアルツハイマー病発症リスクについて重み付けを行っています。

要因として取り上げたのは、年齢、性別、教育、民族性、APOEε4遺伝子型、糖尿病歴、高血圧、喫煙、高密度リポタンパク質レベル、および腰部/腰部比です。

もっとも重み付けが重いのが年齢で、これは85歳以上で跳ね上がり、

次いでヒップとウエストの比率が高かったり、

あるいは教育歴が小学生レベルであったり、喫煙していたりということが比較的リスクを上げやすいことが示されています。

喫煙とヒップ/ウエスト比がアルツハイマー病関連遺伝子であるAPOEε4遺伝子型よりも、リスク寄与率が高いようです。

年齢リスクはいかんともしがたいけれど、生活習慣で大分アルツハイマー病のリスクを軽減できるのかなと思いました。

同様のオーストラリア国立大学の研究

尚、以前同様の研究をご紹介しています ( nounow アルツハイマー病チェックリスト)。

この研究では「年齢」「性別」「教育」「BMI」「糖尿病」「抑鬱」「悪玉コレステロール」「びまん性軸索損傷」「喫煙」「アルコール摂取」「社会的な関わり」「身体活動」「認知活動」「魚の摂取」「農薬を浴びる経験」の要素で重み付けをしています。

論文要旨

【要旨】
・目的
高齢者における血管リスクプロファイルに基づくアルツハイマー病予測のための簡単な要約リスクスコアを作成すること。

・デザイン
縦断的なコミュニティベースの調査。

・設定
ニューヨーク州ニューヨーク

・患者
65歳以上でニューヨークに居住し、ベースライン時に認知症または認知障害のない655人のメディケア受給者。

・主な結果の尺度
我々は、Cox比例ハザードモデルを用いて、危険スコアに寄与する因子を同定するために、いくつかの血管リスク因子と遅発性アルツハイマー病(LOAD)との関連を別々に調査した。次に、各因子のスコア値をβ係数に基づいて推定し、これらの個々のスコアを合計することによってLOAD血管リスクスコアを作成した。

・結果
リスクスコアに寄与する危険因子は、年齢、性別、教育、民族性、APOEε4遺伝子型、糖尿病歴、高血圧または喫煙、高密度リポタンパク質レベル、および腰部/腰部比であった。得られたリスクスコアは認知症を良好に予測した。血管リスクスコアの五分位数によると、LOADを発症するリスクは、スコア0〜14の者を1.0とすると、スコア15〜18の人では3.7倍、スコア19の人では3.6倍スコアが23〜28人の場合は12.6倍、スコアが28以上の人は20.5倍である。

・結論
我々の研究は、この血管リスクスコアがLOADの危険性がある高齢者を特定するための貴重なツールであることを示唆している。このリスクスコアは、LOADのリスクのある人を特定するために使用することができるが、疫学研究で交絡因子を調整するために使用することもできる。

Arch Neurol. Author manuscript; available in PMC 2011 Mar 31.
Published in final edited form as:
Arch Neurol. 2010 Jul; 67(7): 835–841.
doi: 10.1001/archneurol.2010.136
PMCID: PMC3068839
NIHMSID: NIHMS279866
A Summary Risk Score for the Prediction of Alzheimer Disease in Elderly Persons
Dr. Christiane Reitz, MD, PhD, Dr. Ming-Xin Tang, PhD, Dr. Nicole Schupf, PhD, Dr. Jennifer J. Manly, PhD, Dr. Richard Mayeux, MD, MSc, and Dr. José A. Luchsinger, MD, MPH

コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション