米国ではアルツハイマー病の死者は増えているが発症率は低下傾向

nounow編集部

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最近、「米国で認知症患者が減少傾向」と聞く一方で、最新の米疾病対策センター(CDC) は、「アルツハイマー病による死者が大幅に増加」と報告しています。米国の認知症患者の状況を3つの論文から解説してみました。

米国でアルツハイマー病による死者が15年で1.5倍に増加

先月(5月25日)、米疾病対策センター(CDC)は、アルツハイマー病による死者が15年間で55%増加したことを発表しました。

https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/66/wr/mm6620a1.htm

アルツハイマー病は、米国でも認知症の原因疾患の中で最も多く、死因としては6番目で、現在の患者数は500万人以上。

1999年と2014年の死亡診断書を調査したところ、アルツハイマー病で亡くなった人は、14年は9万3541人、10万人当たりでの割合は25.4人で、1999年は同16.5人で大幅に増加しています。

地域別にみると、大まかには南東部で非常に多く、その他、中西部、西海岸でも多い傾向があります。

また、上記サイトのグラフを見ると、年齢別には、75歳以上でアルツハイマー病による死者が増えており、さらに85歳以上では大幅に増えていることが分かります。

また、1999-2005年まではアルツハイマー病による死者が大幅に増加しましたが、2005-2014年ではほぼ横ばい傾向で、さほど増加しているようには見えません。

CDCは、アルツハイマー病による死者が増えた理由として、高齢者人口の増加、早期発見が可能になったことによる診断精度の向上、また、医療が進み心臓系の疾患による高齢者の死亡が減ったことなどを可能性として挙げています。

CDCはこの発表で、アルツハイマー病患者を抱え介護にあたる家族について言及しています。「アルツハイマー病患者の増加は、介護にあたる多く人達が精神的、肉体的に辛い役割を担っているとことを示唆し、介護をする人達にサポートが必要」と報じたようです。

フラミングハムでは認知症発症率が44%減少

上記 CDCによる発表では、アルツハイマー病による死者が大幅に増加したことを報告していますが、昨年、New England Journal of Medicineという医学雑誌には、米国マサチューセッツ州にあるフラミングハムという街の30年以上に渡る調査の結果 、認知症の発症率が44%減少しているという報告が掲載されました。

(参考文献)Satizabal, C. L., Beiser, A. S., Chouraki, V., Chêne, G., Dufouil, C., & Seshadri, S. (2016). Incidence of dementia over three decades in the Framingham Heart Study. New England Journal of Medicine, 374(6), 523-532.

この研究では、認知症の原因疾患の中で最も顕著に減少していたのが血管性認知症と報告しています。

この研究で認知症発症率低下の要因が完全に解明されたわけではありませんが、重要な点は、心血管疾患のリスクを下げる生活が認知症も減らすことを示したことです。

具体的には、認知症発症率の低下が、心臓血管系の健康状態の良さ、心血管疾患のリスク因子(喫煙習慣、高血圧、高LDLコレステロール血症)の低下に比例していたようです。

つまり、血管のリスク因子を管理することにより血管性認知症や血管性認知障害を減少させることができることを示唆しています。

米国における認知症有病率は12年で有意に減少

JAMA internal medicineの 2017年1月号の報告では、米国のHealth and Retirement Study(HRS)のデータより、2000年(10546人)と2012年(10511人)の65歳以上の米国人口縦断調査を行い、2000年と2012年の認知症有病率の変化に関連する社会経済および健康に関する変数を特定しました。

調査の結果、以下のように報告しています。

・米国における認知症有病率は、2000年から2012年にかけて有意に減少。

・認知症有病率の低下には、教育年数の増加が一部関連していた。

・しかし、有病率低下に寄与する社会的、行動的、医学的要因は明らかになっていない。

・認知症の発症や有病率の傾向を継続的に観測することは、将来的な社会的影響を評価するために重要である。

Langa, K. M., Larson, E. B., Crimmins, E. M., Faul, J. D., Levine, D. A.,Kabeto, M. U., & Weir, D. R. (2017). A Comparison of the Prevalence of Dementia in the United States in 2000 and 2012. JAMA Internal Medicine,
177(1), 51-58.

アルツハイマー病の死者は増加しているが発症率は減少傾向

以上3つの報告から、全米の15年間の推移ではアルツハイマー病による死者は確かに大幅に増加していますが、ここ10年くらいを見ますと、高齢化による認知症の増加はあるものの、認知症発症率(アルツハイマー病・血管性認知症共に)は減少傾向にあると考えられます。