高齢女性のうつ症状は認知機能をどの程度引き下げるか?

佐藤洋平

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多因子疾患といわれる認知症ですが、その原因の1つともいわれるうつ症状と認知機能低下との関連を調査した研究をご紹介します。

うつと認知機能低下の関係

認知症というのは多因子疾患で、様々な原因が折り重なって発症することが知られています。

原因として血圧や喫煙、高コレステロール血症などが知られているのですが、それ以外の大きな原因としてうつ症状というものがあります。

うつ症状も幅が広く、相当シビアなうつから、元気ながないねと言われる程度のうつまで色々あると思うのですが、こういったうつ症状は認知機能の低下にどの程度影響を与えるのでしょうか。

今日取り上げる論文は高齢女性のうつ症状が、その後の認知機能の低下にどのように影響を与えるかについて追跡調査を行ったものです。

研究では米国メリーランド州在住の認知症を発症していない高齢女性436名を対象に行っているのですが、研究開始時に軽度以上の抑うつ症状を示した高齢女性はその後認知機能の低下を示す確率が2倍以上になることが示されています。

この研究の特色は、うつ症状が認知機能に与える影響について、丁寧に調べている点で、うつ症状も医者に掛かるような臨床的なものだけでなく、軽度のうつ症状も拾い上げたこと、
また認知機能の低下も認知症の診断という評価ではなく、認知機能の様々な側面を見るテスト(即時再生記憶,遅延再生記憶,注意機能(TMT-A),実行機能(TMT-B))を行っているということで、
認知機能の変化を追うためには、やはり丁寧な評価が必要なんだなあと思いました。

論文要旨

・目的
抑うつ症状は、後期の認知障害および認知症の発症と関連しているという証拠がますます増えている。本研究では高齢女性の縦断研究でうつ病が認知機能障害のリスクを高めたかどうかについて調査を行った。

・研究デザイン
観察研究。最大9年間,6回の追跡調査を行った。

・参加者
436人の高齢者、非認知症女性のコミュニティベースのサンプル

・測定
参加者には、定期的な医学的および神経精神的評価が行われた。認知的評価には、一時的即時性および遅延記憶、精神運動速度、および実行機能が含まれた。参加者は、年齢調整された基準でスコアが10パーセンタイルを下回ったときに、認知テストに関するインシデントの障害を有すると特徴付けられた。ベースラインの抑うつ症状は、老齢鬱病尺度(GDS)(30項目)を用いて測定した。一般線形離散時間コックス比例ハザード回帰モデルを使用して、ベースラインのリスクファクターが、各認知テストにおけるインシデントの障害を予測したかどうかを決定した。

・結果
ベースラインのGDSは、すべての認知テストでの事象障害と非常に関連していた(p <.03)。これらの関連性は、遅延想起および精神運動速度における事象障害に関連する糖尿病以外の血管状態に影響されなかった。 ・結論 これらのデータは、うつ病が認知低下の危険因子であり、診断的および治療的介入の潜在的標的である可能性があることを示唆された。 Am J Geriatr Psychiatry. Author manuscript; available in PMC 2011 Mar 1. Published in final edited form as: Am J Geriatr Psychiatry. 2010 Mar; 18(3): 204–211. doi: 10.1097/JGP.0b013e3181c53487 PMCID: PMC2838202 NIHMSID: NIHMS161234 Depressive symptoms predict incident cognitive impairment in cognitive healthy older women Paul B. Rosenberg, M.D.,1 Michelle M. Mielke, Ph.D.,1,2 Qian-Li Xue, Ph.D.,3,4 and Michelle C. Carlson, Ph.D.2,3 コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション