脳の喫煙ダメージの回復には何年必要か?

佐藤洋平

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喫煙と認知機能の関係および喫煙による認知機能低下から回復する期間など興味深い研究についてご紹介します。

喫煙が認知機能に与える影響

認知症に影響を与える要因は数多くあるのですが、その中で決まって取り上げられるものに喫煙というものがあります。

しかしながら喫煙が認知機能の低下に与える影響というのは高齢者に限ったものなのでしょうか。また喫煙による脳の機能低下から回復するためには何年くらいの禁煙期間が必要なのでしょうか。

今回取り上げる論文は、喫煙と認知機能の関係について、英国在住のおよそ7200人を対象に行なった研究になります。

この研究では、喫煙歴と認知機能の変化について最大13年間追跡を行って調べているのですが、結果を述べると

1 喫煙者は喫煙歴のないものと比べて認知機能の低下があり、中年期において顕著であった
2 禁煙して間もないものも1と同様の結果を示した
3 喫煙による認知機能低下から回復するためには最低10年の禁煙期間が必要であった

ことが示されています。

過去に煙草を吸っていたこともあり、煙草の時間というのは決して嫌いではないのですが、、、
この代償も中々大きいものだなあと思いました。

論文要旨

・背景
喫煙は認知症の危険因子である可能性があるが、その影響は喫煙者の寿命が短く被験者が高齢であるため過小評価されている可能性がある。

・目的
中年から老齢への移行期における喫煙歴と認知低下との関連性を検討すること

・デザインおよび参加者
Whitehall Ⅱ研究の対象者である男性5099人と女性2137人のデータで、最初の認知評価(1997-1999)における平均年齢は56歳(44-69歳)であった。2002-2004年と2007-2009年にわたって繰り返し評価を行った。

・主な結果指標
認知テストバッテリーは、記憶、語彙、実行機能(1つの推論試験と2つの流暢性試験からなる)、および全体的認知試験から構成された。喫煙状況は全試験期間にわたって評価された。線形混合モデルを使用して、喫煙歴と10年間の認知低下との関連性をZスコアとして表した。

・結果
男性では、無喫煙者の中の語彙を除くすべての試験における10年間の認知低下は、ベースライン標準偏差の1/4から3分の1の範囲であった。男性において現在喫煙中のものは,喫煙歴がないものと比較し,より速い認知低下が観察された。近過去に喫煙歴があったものは、実行機能の大幅な低下があったが、長期間禁煙が継続しているものは喫煙歴がないものと同等の実行機能を示した。さらにドロップアウトと死亡を考慮した分析では、これらの差異は1.2〜1.5倍大きかった。女性では、認識低下は喫煙状態の関数として変化しなかった。

・結論
中年の男性喫煙者は、非喫煙者と比較して、認知機能と実行機能の低下が早かった。少なくとも10年間の禁煙を有する喫煙者では、認知低下に悪影響はなかった。

Arch Gen Psychiatry. Author manuscript; available in PMC 2013 Jun 7.
Published in final edited form as:
Arch Gen Psychiatry. 2012 Jun; 69(6): 627–635.
doi: 10.1001/archgenpsychiatry.2011.2016
PMCID: PMC3675806
HALMS: HALMS677216
INSERM Subrepository
Impact of smoking on cognitive decline in early old age: the Whitehall II cohort study
Séverine Sabia,1,* Alexis Elbaz,2,3 Aline Dugravot,4 Jenny Head,1 Martin Shipley,1 Gareth Hagger-Johnson,1 Mika Kivimaki,1 and Archana Singh-Manoux1,4,5
コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション