歯周病とアルツハイマー病の関連

鈴木邦義(ペンネーム)

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歯周病とアルツハイマー病との関係についてはこれまでもnounowでご紹介しましたが、今回はある特定の菌体成分がアルツハイマー病を誘発することが明らかにされた論文をご紹介します。

アルツハイマー型認知症とは

認知症というのは多因子疾患で、様々な原因が折り重なって発症します。原因として高血圧や高コレステロール血症などによる動脈硬化、喫煙、アルコールの多飲などさまざまなものがありますが、歯周病も原因のひとつであると考えられています。

認知症は、記憶障害・判断力の低下・見当識障害・その他の行動(心理症状「BPSD」)等を引き起こします。その中でもアルツハイマー型認知症は、認知症の中で一番多い病型です。アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり、神経細胞が壊れて死んでしまい減っていく為に、認知機能に障害が起こると考えられています。また徐々に脳全体も委縮していき身体の機能も失われていきます。

歯周病菌によってアルツハイマー様病態がおこる ~特にカテプシンBが重要~

近年、重度歯周病の罹患と認知機能低下との関連が報告され、また、アルツハイマー病患者の脳内で歯周病菌のジンジバリス菌(Pg菌)の菌体成分リポ多糖(LPS)が検出されることが報告されています。これらの結果より、Pg菌が脳炎症を引き起こし、認知症の悪化を招くと考えられていますが、まだ詳細なメカニズムはわかっていないのが現状です。

今回、九州大学の研究グループによって、歯周病原因菌のジンジバリス菌(Pg菌)の菌体成分リポ多糖(LPS)を全身に慢性投与することにより誘発されるアルツハイマー様病態の原因酵素が、リソソーム酵素「カテプシンB」であることが明らかにされました。

研究では若年・中年の野性型マウスと、カテプシンB欠損マウスを用いて実験を行っています。これらのマウスにPg菌のLPSを全身投与し、学習行動や脳炎症にどのような影響が及ぶかを解析しています。

結果として、歯周病の菌体成分によりアルツハイマー様病態が誘発されること、ミクログリア関連の神経炎症が起こること、ニューロンにおけるアミロイドβ(Aβ)の蓄積が起こることを示し、カテプシンBが原因酵素となる事を初めて明らかにしました。

今回の研究において、カテプシンBが炎症シグナルの伝達に関与していることが明らかとなったことから、カテプシンBの特異的阻害剤を投与することで歯周病によるアルツハイマー病の発症と症状の悪化を防ぐことができる可能性が示唆されました。将来的に、臨床的に使用できるカテプシンB特異的阻害剤の開発が期待されるところです。

<まとめ>
・Pg菌由来のLPSを全身投与することでアルツハイマー様病態が誘発される
・カテプシンBが神経の炎症において重要な役割を果たしている
・カテプシンBがアミロイドβ(Aβ)の蓄積において重要な役割を果たしている

以上のような研究成果が報告されました。

今回の研究はマウスでの結果ですが、自宅でできる認知症対策として、まずは歯周病があるかどうかを調べ、早期に治療を行うことでアルツハイマー型認知症の進行を遅らせることができる可能性が考えられます。

ご紹介した論文
Cathepsin B plays a critical role in inducing Alzheimer’s disease-like phenotypes following chronic systemic exposure to lipopolysaccharide from Porphyromonas gingivalis in mice.
Zhou Wu. et al. Brain, Behavior, and Immunity. June 10 2017
pii: S0889-1591(17)30189-7. doi: 10.1016/j.bbi.2017.06.002.