認知症の3分の1は予防可能〜AAIC2017より(後編)

nounow編集部

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AAIC2017(Alzheimer’s Association International Conference 2017)で報告されたランセット委員会による「認知症の3分の1は予防できる」という研究、その他重要なトピックを後編としてまとめました。

認知症の3分の1は予防できる

もう1つAAIC2017で話題になったのは、ランセット委員会がAAIC2017に提出し、ランセット誌にも掲載された、認知症症例の3分の1以上が、生活習慣を改善することで予防できる可能性があると報告したリポートです。

研究によると、現在までのエビデンスによれば、認知症の全症例の約35%が、潜在的に修正可能な9つの危険因子に起因することが示されています。また、これら修正可能なリスク要因は、老後だけでなく、若年期、中年期など多くのステージで確認されているとしています。

9つの修正可能なリスク要因とは、

若年期・・・最高15歳までの教育
中年期・・・高血圧、肥満、難聴
老年期・・・うつ病、糖尿病、物理的な不活動、喫煙、社会的接触が少ないこと

です。

例えば、すべての認知症症例の8%が、初期の貧しい学校教育に関連、5%が喫煙に関連する可能性があるとしています。

認知症発生率を減らすために、認知症になっていない中高年層の高血圧を積極的に治療することを強く推奨、
より多くの幼児教育、定期的な運動、社会的関与の維持、禁煙、難聴、うつ病、糖尿病、および肥満の改善を推奨するとしています。

上記9つのリスク要因は認知症研究でよく出てくる項目ですが、難聴を潜在的な危険因子とした点は新しく、研究の初期段階ながら今後注目されます。

なお、データ不足のために、食事要因、アルコール使用、視覚障害、大気汚染、睡眠は含まれてないとのことです。

委員会によると、7つの主要なリスクファクターが10%減ることにより、世界中の認知症患者数が100万人超減少する可能性がある。認知症発症を1年遅らせる介入は、2050年に世界で認知症に罹患している人口を900万人減少させる可能性があるとしています。

その他トピックまとめ

1)聴力と言語能力そして緊急入院が将来の認知機能を予測する可能性

AAIC 2017で報告された研究によると、難聴・聴力喪失の人が正常な聴力の人と比較して軽度認知障害になる確率が約3倍であることを発見され、別の研究では軽度認知障害の人の話す言葉の内容や話し方の流暢さは、正常な人より早く衰えました。

この研究がさらに重ねられていくと、聴力喪失と言語パターンの変化が、認知機能低下の始まりと評価する指標になる可能性があるとしています。

また別の研究では、高齢者が緊急的に入院すると、認知機能低下リスクが高まることがわかりました。通常の入院と比較して、認知機能低下率が約60%高まることと関係があったとのことです。

2)睡眠障害とアルツハイマー病リスクとの関連

AAIC 2017では睡眠時呼吸障害(SDB)と閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)がアルツハイマー病による脳の変化との間に重要な関係があることを発見しました。
まだ検証することが必要ながら、SDB/OSAを治療することによって、アルツハイマー病リスクを低下させる可能性があるとしています。

3)健康な食習慣は認知機能を維持し、認知症のリスクを軽減する可能性

4カ所の大規模な研究結果によると、高齢者の食習慣と認知機能維持の間に関係があることを示しています。

米科学者のグループは、約6000人の高齢者の研究で、心臓の健康に良い食習慣を維持している人が優れた認知機能を維持する可能性があることを突き止めました。

以前nounowでも取り上げたMIND食が高齢者の認知低下のリスクを30%から35%軽減することにつながりました。(参考:アルツハイマー病予防に有効なMIND食

スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究者は、Nordic Prudent Dietary Pattern(根菜以外の野菜、果物、魚、鶏肉、茶)の食習慣の人が良好な認知状態を維持していることを発見しました。

その他の研究では、不健康な食習慣や炎症、小さい脳容積などが認知機能低下リスクと関係があることを発見しています。

4)ストレスの多い経験による認知症リスクの人種格差

AAIC 2017で報告された数件の研究によると、米国においてアルツハイマー病など認知症発症リスクに、人種的格差があることを確認したとしています。

ストレスの多い生活経験や地域の環境が認知症リスクの一因になり、アフリカ系米国人に偏って影響を与えていることを示す兆候が強まっていると指摘しています。

この人種的格差は、90歳以上で顕著であり、超高齢アフリカ系米国人と中南米系米国人は、アジア系米国人および白人と比較して極めて高い発症率になっていたとのことです。

5)アミロイドベータを検知する血液試験の有望な初期研究

血液検査のような、簡単かつ非侵襲、安価なアミロイドベータ検査が必要とされており、Washington University School of Medicineの研究者が、少人数の研究グループと検証サンプルでアミロイドベータ検出のための血液バイオマーカーの調査を行い有望な発見を発表しました。

6)アルツハイマー病発症リスクに関わる遺伝子3つを発見

カーディフ大学の研究チームは、85,133人の遺伝子解析により、3つの同定可能なリスク遺伝子を絞り込みました。

様々な新しい研究成果が発表されたAAIC2017。米国版フィンガー研究の発表やランセット委員会の研究報告の聴力と認知症発症リスクの関係、ストレスの多い経験によるアルツハイマー病発症リスクの人種格差などの問題などが目を引きました。さらなる研究の進展が期待されます。

https://www.alz.org/aaic/about/london.asp