植物由来のエッセンシャルオイルの認知機能への効能

工樂真澄

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「お薬」には人工的に作られた化学物質も多いですが、植物や菌類など自然の産物が、薬としてすばらしい効果を持つこともあります。今回は、植物から抽出されたオイルがもつ認知機能への効果についてご紹介します。

認知機能に効果のある植物由来のエッセンシャルオイル

認知症には長い間「特効薬」が存在せず、行動や心理面のみを対処療法的に薬でコントロールしていました。1999年になって登場したのが最初の認知機能改善薬「ドネペジル」です。この薬は、記憶障害などの「中核症状」の改善に効果があり、認知症の進行を一定程度くいとめることができます。ドネペジルは神経伝達物質「アセチルコリン」を分解してしまう酵素の働きを抑えることで、アセチルコリンの量を調節して、記憶力など脳の機能をある程度維持することができます。今では同様の作用をもつ薬がいくつかあり、中でも「ガランタミン」というお薬は、もともと「ヒガンバナ科」の植物の球根から得られた物質です。

認知機能に効果を持つ植物は他にもあります。たとえば、「Polygonum hydropiper」や「Rumex hastatus」という植物、さらになじみ深いものからだとスイセンの1種である「Narcissus poeticus」から得られたオイルにも、アセチルコリン分解酵素を抑制する効果があることがわかっています。またこれらのオイルには活性酸素を除去する効果が認められており、炎症作用を抑える効果もあると考えられます。

脳の神経伝達物質を調節することができるならば、記憶や学習に効果のあるエッセンシャルオイルはないのでしょうか? ユーカリの1種「Eucalyptus globulus」やラベンダー「Lavandula angustifolia」のエッセンスオイルは、集中力を持続させる作用があることが実験から明らかになっています。また食卓でもおなじみのローズマリー「Rosmarinus officinalis」は高い活性酸素除去作用があることが知られており、ネズミや犬を使った実験で、記憶や集中力を高める効果があると報告されています。

アロマテラピーの効果は心理的なものでもある

記憶力は嗅覚と密接に関係しており、匂いによって集中力や記憶力は変化することが知られています。セージ「Salvia lavandulifolia」というハーブが記憶力に与える影響を調べた実験があります。

60人の被験者を3つのグループに分け、最初のグループには「このオイルは記憶力を低下させます」と教えておきます。2つ目のグループには、「このオイルは記憶力を向上させます」と言っておきます。3つ目のグループは対照群で、効果についてなにも知らされません。それぞれのグループにオイルの匂いをかいでもらい、記憶力テストを行いました。

その結果、「効果がある」と伝えられたグループでは有意に記憶力が向上していましたが、「記憶力が低下する」と言われたグループでは、テストの結果が悪くなっていました。また面白いことに、効果に関する情報を伝えなかった対照群では、テストの成績が向上していました。この結果から、セージのエッセンシャルオイルは記憶力向上に効果はあるものの、心理的な側面が大きく関わる可能性が示されました。

気にいった匂いのオイルから始めよう

今回は自然の植物から得られるエッセンシャルオイルの、認知機能への効果をご紹介しました。これらの中で医療用に使われるものは一部ですが、応用研究が進むことでさらに多くの物質が認知機能の改善に使われるようになると期待されます。エッセンシャルオイルは身近に手に入るものも多いので、「最近、なんだか集中力が足りないなあ」と思いつつも、薬を飲むほどではない、と感じておられる方は、一度お気に入りの匂いを見つけてお試しになってはいかがでしょうか。

今回ご紹介した論文
Neuroprotective and Anti-Aging Potentials of Essential Oils from Aromatic and Medicinal Plants.
Ayaz M et al. Front Aging Neurosci. 2017 May 30;9:168.