抗うつ薬と認知症

鈴木邦義(ペンネーム)

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抗うつ薬の服用がアルツハイマー病の発症リスクに関連するとした台湾での研究内容についてご紹介します。

抗うつ薬が認知症と関連しているか

うつ病が認知症の発症リスクの増加に関連しているというデータについては、すでにいくつかの先行研究において示されています。今回の報告では、うつ病に対して用いられる抗うつ薬が、うつ病そのものや、その他の認知症リスクを上昇させる疾患とは独立して、認知症リスクに関与しているかどうかを検討したものです。

これまでの研究では、抗うつ薬が認知機能を保護するとともに、認知症に対する保護機能を示すことが一部の研究では示唆されている一方で、他の研究では抗うつ薬の投与が認知症に関連しているという可能性が提起されています。最近のシステマティックレビューやメタアナリシスでも、特に65歳以前に抗うつ薬の使用を開始した人にリスクの増加が認められるという結果が得られています。今回の研究は、台湾の健康に関する公的データベースを用い、抗うつ薬の服用が認知症やアルツハイマー病のリスクになるということを示したものです。

2003-2006年に、30日以上の間隔を空けて2回以上何らかの理由で抗うつ薬の処方を受けた5819例を抽出し、解析しています。患者群の内訳は、大うつ病、気分変調性障害、特定不能の抑うつ障害などのうつ病と診断されたものが17%、不安神経症が24%、不眠症が20%と診断されています。そして、その他の患者の多くは、認知症のリスク因子と考えられるさまざまな内科的疾患を有していました。

比較対象としては、年齢や性別などの背景因子をマッチさせた、抗うつ剤服用歴の無い23276例を用い、認知症またはアルツハイマー病と診断されるかどうかについて検討を行いました。

結果としては、抗うつ薬の使用そのものが、糖尿病・高血圧・脂質異常症といった動脈硬化を起こす疾患や、不眠症、不安神経症などとは独立して認知症またはアルツハイマー病の発症リスクと関連しているというものでした。

抗うつ薬の種類と認知症リスク

抗うつ薬には、いろいろな種類があります。今回の研究では、抗うつ薬の種類によるハザード比の上昇程度についても検討されています。

四環系抗うつ薬[1種類] 6.6
モノアミンオキシダーゼ阻害薬[1種類] 4.9
セロトニン-のルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)[1種類] 4.7
セロトニン拮抗薬および再取り込み阻害薬[1種類] 4.5
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)[6種類] 3.7
三環系抗うつ薬(TCA)[3種類] 3.3

上記のように、四環系抗うつ薬が最もリスクが高いということが分かりました。
※ちなみに、うつ病に対しては一般的に、副作用が比較的少なく、かつ比較的新しい抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などが処方されるケースが多いです。

薬による認知症リスク

実は抗うつ薬以外でも、認知機能に影響する薬はいろいろ知られています。例えば、胃腸の過活動による胃痛や腹痛の軽減、乗り物酔いの抑制、過活動膀胱の治療などにも用いられる抗コリン薬や、前立腺がんの治療などに用いられるホルモンに影響する薬などにおいては、認知機能を悪化させる場合があります。

高齢者の占める割合が4人に1人以上になっている現代においては、多くの薬を飲むことによりいろいろな弊害が起こることが指摘されており、適切な服薬管理が今後ますます求められていくでしょう。これをポリファーマシーとよびます。認知機能に悪影響を及ぼす薬剤は意外と多いものの、加齢による変化だとして正しく評価されていないこともあります。薬剤性に認知機能が低下しうることをきちんと認識し、適切な投薬・服薬を行っていくことが大切でしょう。

ご紹介した論文
Risk analysis of use of different classes of antidepressants on subsequent dementia: A nationwide cohort study in Taiwan.
Then C-K et al. PLoS One 2017 Apr 6