性格特性による認知症リスク

鈴木邦義(ペンネーム)

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米国人を対象とした大規模な研究から、性格により認知症発症リスクがある可能性を示唆した論文内容についてご紹介します。

性格と認知症

動脈硬化が認知症と関連することは、脳が血流豊富な臓器であることからすれば、納得しやすいものですが、果たして「認知症になりやすい性格」というものはあるのでしょうか。たとえば几帳面で神経質な人が認知症になりやすいのか、それともおおらかで少し抜けているところがあるような人が認知症になりやすいのか。または、認知症は性格と関係なく進行・発症するものなのでしょうか。

近年の研究において、ビッグファイブ性格特性という性格に関する5項目を評価することで、将来的に認知症が発症してしまうかどうかについて予測できるかもしれないことが分かってきました。今回、そのビッグファイブ性格特性(経験への開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向)によって認知症のリスクが変わるかどうかについて、非常に大規模なサンプルを用いて行った研究結果が発表されました。評価項目(エンドポイント)としては、認知機能障害の発症と、認知機能障害から認知症への移行について検討しています。

ビッグファイブ性格特性とは

ゴールドバーグらが提唱したパーソナリティの特性論で、人間の性格が次の5つの要素の組み合わせで構成されるとするものです。
・経験への開放性 (Openness to Experience)
・誠実性 (Conscientiousness)
・外向性 (Extroversion)
・協調性 (Agreeableness)
・神経症傾向 (Neuroticism)

これらを言い換えれば、好奇心の強さ、まじめさ、人と楽しむことが好きかどうか、空気を読むことに長けているか、いらいらしやすいか、といった要素をもとに、性格を判断するものです。

不誠実で、協調性が低く、いらいらしやすい人は認知機能障害・認知症になりやすい

研究者らは、50歳をこえている米国人に関する大規模な研究データを解析しました。調査開始時(ベースライン時)には、認知機能が正常であることが確認されている10457例と、認知機能障害をもっていた1850例を対象とし、ベースライン時の性格特性と、2~8年後に認知症が発症しているかどうかの関係性を評価しました。

ベースライン時に自己の性格について簡単な質問に基づく情報を評価し、認知機能状態は2年ごとに電話による約10分間のスクリーニングツールを用いて評価しています。

結果としては、下記の通りです。
・協調性が1SD(標準偏差)低い場合→協調性のない人
・神経症傾向が1SD(標準偏差)高い場合→いらいらしやすい人、気にしやすい人
において、認知機能障害の発生リスクと関連していることが分かりました。

・誠実性が1SD(標準偏差)低い場合→不真面目な人
において、認知機能障害から認知症へ進展するリスクと関連していることが分かりました。

また、これらの因子は、喫煙、肥満、動脈硬化と関わる疾患などの有無によって補正を行っても有意であり、さらに互いに独立して認知機能障害の進行と関連していることが分かりました。

性格と病気の関係については、まだよくわかっていないところが多いのが現状ですが、実は医師の間では、ある特定の病気にかかる人に共通した性格があることについては、ある程度納得できるものだと認識されています。将来的には、特定の性格特性と関連する遺伝子と近いところに、特定の疾患と関連する遺伝子が存在していることなどが分かってくるかもしれません。

今回の研究では、認知症と性格の関係について、一端が明らかにされました。精神科・心療内科・内科の医師にとっては、上記に挙げたような特定の性格因子を有する方に対しては、認知機能障害が発生しやすいことを念頭において診療を行う必要があるでしょうし、家族に該当する方がいる場合は、認知機能を維持できるように努めるのがよいでしょう。予防的介入によって効果があるかどうかは、今後の追加報告が待たれるところです。

ご紹介した論文
Personality traits and risk of cognitive impairment and dementia.
Terracciano A. et al. J Psychiatr Res 2017 Jun; 89:22.