頭蓋内アテローム性動脈硬化症と認知機能障害

鈴木邦義(ペンネーム)

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頭蓋内アテローム性動脈硬化症と認知症との関連を調べた論文をご紹介します。

頭蓋内アテローム性動脈硬化症

加齢によって、アテロームと呼ばれる脂肪のかたまりのような沈着物(血液中の脂肪、コレステロール、カルシウムおよびその他の物質)が血管の内側に蓄積することがあります。このアテロームを伴って動脈硬化が進行することを、アテローム性動脈硬化症といいます。

心血菅疾患の発生リスクを上昇させる動脈硬化などの心血管危険因子は認知症発症と関連することがもともと指摘されていますが、頭蓋内におけるアテローム性動脈硬化が認知機能に関連するかどうかは、現在まであまり質の高いデータが示さておらず、リスクの上昇の程度はほとんど明らかにされていませんでした。

今回、頭蓋内におけるアテローム性動脈硬化症が認知機能障害とどの程度関連しているかに関する研究が、権威のある医学雑誌であるNeurology誌に掲載されました。

頭蓋内アテローム性動脈硬化症は軽度認知障害および認知症の有病率上昇と関連する

高齢者に対する横断的研究において、頭蓋内アテローム性動脈硬化症が軽度認知障害(MCI)および認知症の発症率の上昇と関連していることが分かりました。

今回、Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)Neurocognitive Studyの研究者であるDr. Dearbornらによって、2011年から2013年に神経学的診察・検査とhigf-resolution vessel wall MRIを受けた参加者を対象として、MR血管造影における血管壁肥厚と軽度認知障害(MCI)・認知症の関連について調べたものです。
※認知機能のレベルは、確立されている基準に従って、正常、軽度認知障害(MCI)、認知症に分類されています。

研究に参加した1,744人の平均年齢は76.3歳、そのうち601人(34.5%)が軽度認知障害(MCI)、83人(4.8%)が認知症でした。これらの診断のうちほとんどは、アルツハイマー病もしくはアルツハイマー病と脳血管疾患の合併によるものでした。また、857人(49.1%)には喫煙歴がありました。

結果として、前大脳動脈(ACA: anterior cerebral artery)プラーク(adjusted RPR 3.81, 1.57-0.23)、2つをこえる領域のプラーク(adjusted RPR 2.12, 1.00-4.49)、50%をこえる狭窄(adjusted RPR 1.92, 1.01-3.65)は認知症の有病率と関連していました。後大脳動脈(PCA: posterior cerebral artery)プラーク(adjusted RPR MCI 1.43, 1.04-1.98)は軽度認知障害(MCI)とは関連していますが、認知症とは統計学的に有意な関連が認められませんでした。(adjusted RPR dementia 1.58, 0.79-2.85)一方、中大脳動脈(MCA: middle cerebral artery)の動脈硬化性病変は認知機能障害と関連が認められませんでした。

さらに、研究対象者の46%において、1つをこえる領域のプラークがみられ、特に前大脳動脈(ACA: anterior cerebral artery)にプラークがある患者は、最も多い領域数にプラークが認められました。(mean 6.0, SD 4.4)

以上のように、頭蓋内アテローム性動脈硬化症が軽度認知障害(MCI)および認知症と関連することが示されました。高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙など、心血管危険因子を改善することは頭蓋内アテローム性動脈硬化症の発症を抑制する可能性があり、それによって軽度認知障害(MCI)および認知症のリスクを低下させることにつながるかもしれません。

今回、特に前大脳動脈領域におけるプラーク形成が認知機能障害と大きく関わっているという結果でしたが、認知機能についての主な担当領域が前頭葉であることと一致した結果だと考えられます。また、狭窄があることよりも前大脳動脈領域にプラークがあることの方がより高いリスクであったということも印象的です。

軽度認知障害(MCI)および認知症を予防するためには、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病に気を付けつつ、禁煙することがやはり大切である、という可能性が示されました。今回の研究は、後方視的なデザインですので、今後、そうした生活習慣病への治療介入によって発症率が下がるか、といった前向き研究の結果が出ることが待たれます。

ご紹介した論文
Intracranial atherosclerosis and dementia: The Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) Study.
Dearborn JL et al. Neurology. 2017 Apr 18,88(16):1556-1563