よく噛むことは認知症予防になる

大塚真紀

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よく噛むことは消化に良いとか脳にも良いといわれますが、マウスを使ったよく噛むことの認知機能への影響を調べた研究をご紹介します。

よく噛むことの効果

よく噛むと消化に良い、ダイエット効果があると聞いたことがある方もいるかもしれません。よく噛むと食材が小さくなり、腸への負担が軽減され消化吸収されやすくなります。また、よく噛むと唾液がたくさん分泌されるので消化を促進します。よく噛むと自然と食事のペースがゆっくりとなり、満腹中枢が刺激されて過剰に食べてしまうのを防ぐことができます。

さらに、よく噛むことは消化やダイエットに良いだけでなく虫歯や生活習慣病の予防になります。噛むことで分泌される唾液は殺菌作用があるので虫歯を防ぐことができますし、よく噛むことは結果的に脂質や糖質の摂り過ぎを予防できます。
よく噛むと脳に刺激も与えられることがわかっています。噛むことで脳の神経が刺激されるだけでなく、脳への血流が良くなるからです。

よく噛むことは認知症予防になる

日本の研究チームは、マウスを使った実験でよく噛むと認知症の予防になる可能性があることを2017年6月に「Journal of Dental Research」誌に発表しました。研究チームは、マウスを粉末状のえさと固形状のえさを与えるグループにわけ、認知機能にどのような影響を与えるか観察しました。固形状のえさを与えられたマウスの方がよく噛むようになります。

結果を見ると、固形状のえさを与えられたグループのマウスは、粉末状のえさを与えられたマウスに比べて学習能力が高くなることがわかりました。また、粉末状のえさを与えられたマウスを観察したところ脳内で記憶に関わる海馬とよばれる部分において神経活動やシナプス形成、脳由来神経栄養因子(Brain Derived Neurotrophic Factor: BDNF)などが減少していることが確認されました。

つまり、粉末状のえさを食べていると噛むことによる脳への刺激が少ないため、神経細胞が減少し認知機能の低下につながる可能性のあることが明らかになりました。今回の研究結果により、よく噛むことを意識すれば認知症の予防になる可能性が示されました。
今回の研究ではマウスを対象としているため、今後はヒトを対象とした研究が行われることが期待されます。

よく噛むためには

よく噛むことは脳に刺激を与え、認知症の予防になるようです。では、よく噛むためにはどのようにすればよいのでしょうか。まず、虫歯や歯周病がない状態にすることが大切です。虫歯や歯周病があると、痛みのために十分に噛むことができません。また、虫歯や歯周病の存在自体も認知症の発症に関連するといわれているので、なるべく早めに治すようにしましょう。

よく噛むためには、食材の選択や調理法も重要です。最近ではスーパーやコンビニなどですぐに食べられる加工食品が手に入ります。急いでいる時には便利ですが、パンや麺類などのやわらかい食品が多く、よく噛むためには不向きかもしれません。よく噛むことを意識して、商品を選ぶようにするとよいでしょう。

料理をする時には歯ごたえのある食材を選んだり、野菜をいつもより大きく切るようにするとよいです。野菜炒めや煮物でも火を通しすぎないで歯ごたえを残すのも1つの方法です。
口腔内環境を整えて、よく噛み、認知機能を維持していきたいものです。

<参照サイト・参考論文>
http://www.kamiya-dent.com/blog/2016/01/12/101
http://www.ortho-sumitomo-dc.jp/treatment/food/bite2.html
http://www.8020zaidan.or.jp/info/effect8.html
1) J Dent Res. 2017 Aug;96(9):1058-1066. doi: 10.1177/0022034517708771. Epub 2017 Jun 16.
Reduced Mastication Impairs Memory Function.
Fukushima-Nakayama Y1,2, Ono T1, Hayashi M1, Inoue M1,2, Wake H3, Ono T2, Nakashima T1,4,5.