骨がもろいとアルツハイマー病を発症しやすい!?

大塚真紀

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骨密度の低下とアルツハイマー病の発症リスクとの関連についてアメリカでの研究と中国からの報告についてご紹介します。

骨密度と認知症の関係

生きている時には元気に暮らし、寿命を迎えた時に病気を患うことなく死にたいとう願いを表す「ピンピンコロリ」という言葉があります。日本は高齢化社会となり、ピンピンコロリを可能にすることは高齢者本人にとっても社会にとっても重要です。

元気に暮らすためには、自分の足で歩いたり、食事を自力で摂ることが必要です。しかし、高齢になると骨密度が低下し、骨粗鬆症となり骨折しやすくなります。特に女性では、閉経と共に女性ホルモンが減少し、骨がもろくなります。

骨密度の低下と認知症は、お互いに負の影響を与え寝たきりになるきっかけとなることがあります。骨密度の低下、いわゆる骨粗鬆症の状態では、尻もちをついたり、少しつまずいただけでも骨折することがあり、それをきっかけに手術や入院、安静が必要になり横になることが増えてしまいます。すると、長期間横になっているので筋力が落ち、骨折が治っても自分の足で歩くことが難しくなります。仮に歩けるようになったとしても、以前より足の力が弱っているため、また骨折をすることもあるようです。また、長期間横になっていると刺激も少なくなり、認知症を発症しやすくなります。認知症を発症すると活動性が低下することが多く、骨密度が低下するという悪循環に陥ります。

実際に、認知症やアルツハイマー病の患者さんにおいて骨密度が低下していることが明らかになっています。

骨密度が低いとアルツハイマー病を発症しやすい可能性

アメリカの研究チームは、マウスを使った実験でアルツハイマー病を発症する前に骨密度が低下する可能性があることを2016年12月に「Journal of Alzheimer’s Disease」誌に発表しました。

研究チームは、アルツハイマー病を発症するマウスが脳内に異常を起こす前に骨密度を測定しました。すると、健常なマウスと比較してアルツハイマー病を発症するマウスは脳内に異常が起きる前から骨密度が明らかに低下していることが明らかになりました。つまり、アルツハイマー病を発症する前から骨密度が低下しているということです。

また、研究チームはアルツハイマー病を発症するマウスの脳内においてセロトニン産生の低下を認めることもつきとめました。セロトニンは、ヒトにおいて気分や睡眠などに関係するホルモンです。セロトニン産生の低下と骨密度の低下の関連性に関しては、今後さらなる研究が必要とされています。

今回の研究で、アルツハイマー病を発症する前に骨密度が低下していることが示唆されたため、骨密度検査を行えばアルツハイマー病の発症を予測できる可能性が明らかになりました。アルツハイマー病の発症を事前に予測できれば、何らかの治療によって発症を防ぐことができるかもしれません。

2014年に「Current Alzheimer Research」誌に発表された中国からの報告では、60-75歳の男女946名を対象に骨密度を測定したところ、骨密度が低いとアルツハイマー病を発症するリスクが2倍になることがわかっています。

今後ヒトを対象とした研究で骨密度やセロトニンとアルツハイマー病の関連がさらに明らかにされることが期待されます。

骨を強くするためには

現時点では、骨密度の低下とアルツハイマー病の発症に関連があることがわかっています。今後の研究に求められるものの1つに、骨を強くすれば認知症やアルツハイマー病を防ぐことができるかどうか明らかにすることが挙げられます。しかし、少なくとも骨密度が低下すると骨折しやすくなり、認知症の発症リスクになるので骨を強くしておいて損はありません。

無重力の状態で長期間生活する宇宙飛行士の骨密度が低下することからもわかるように、骨を強くするためには重力をかけて骨を刺激することが大切です。つまり、骨密度を上げて強い骨にするためにはスクワット、ジャンプ、ウエイトトレーニングなど骨に荷重がかかる運動が推奨されます。いきなり運動をすると体に負荷がかかることもあるので、まずはウォ―キングから始めてみてもよいでしょう。

参照サイト・参考論文>
1) J Alzheimers Dis. 2017;55(4):1605-1619. doi: 10.3233/JAD-160658.
Early Evidence of Low Bone Density and Decreased Serotonergic Synthesis in the Dorsal Raphe of a Tauopathy Model of Alzheimer’s Disease.
Dengler-Crish CM1, Smith MA1,2, Wilson GN1,3.
2) Curr Alzheimer Res. 2014;11(7):706-13.
Bone loss and osteoporosis are associated with conversion from mild cognitive impairment to Alzheimer’s disease.
Zhou R, Zhou H, Rui L, Xu J1.