LDLコレステロールと認知症

鈴木邦義(ペンネーム)

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悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール値と認知症発症との関連について研究した論文をご紹介します。

LDLコレステロールと認知症

コレステロールには、細胞膜を作る機能や筋肉を作るホルモンの原材料、および、栄養分を分解する胆汁酸の原材料などの重要な役割があります。

しかし、脂肪の多い食事やカロリーの高い食べ物を摂りすぎると、コレステロールが過剰になり、高LDLコレステロール血症、さらには動脈硬化を引き起こします。

LDLコレステロールは一般的に悪玉コレステロールと呼ばれます。LDLコレステロールの値が低くなることが、動脈硬化にいい影響を与えることはわかっていますが、LDLコレステロール値と関わる遺伝子が、認知症やパーキンソン病などの神経疾患に対してどの程度影響を及ぼすかについてはまだ十分に検証されていません。

以下にひとつ海外の研究結果の概要をご紹介します。

LDLコレステロールに関わる遺伝子

LDLコレステロール値と関連している血漿中プロ蛋白質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)と、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムA(HMG-CoA)還元酵素の阻害、およびその他の遺伝子変異が、さまざまな神経疾患(アルツハイマー病、血管性認知症、全てのタイプの認知症、パーキンソン病)と関連するかどうかについて、下記のように検討しています。

(1)ベースラインにおけるLDLコレステロール値と上記の神経変性疾患との関連
(2)遺伝子バリアントであるPCSK9およびHMGCRのLDLコレステロール値との関連
(3)LDLコレステロールの値を低下させるPCSK9およびHMGCRアレルと、上記の神経変性疾患との関連
(4)LDLコレステロールの値を低くさせる遺伝子バリアントを総合的に評価した際の、上記の神経変性疾患との関連

対象はデンマークの全国患者登録から抽出した111194例で、コレステロール値の分布は、1.8 mmol/L未満が3.7%、1.8~2.59 mol/Lが18%、2.6~3.99 mmol/Lが52%、4 mmol/L以上が26%でした。また、患者の内訳は、AD患者は1,001例、血管性認知症患者は256例、すべてのタイプの認知症患者は2,154例、およびパーキンソン病患者は460例でした。

結果としては以下の通りです。
まず、LDLコレステロール値は、1.8 mmol/L未満群と4 mmol/L以上群を比較した場合、パーキンソン病と有意に関連しているものの、アルツハイマー病、血管性認知症、認知症全体との関連は有意ではありませんでした。

また、PCSK9およびHMGCRのバリアントは、年齢、性別、高血圧、喫煙、身体活動、アルコール摂取、教育および閉経状態など、可能性のある交絡因子による影響を排したところ、LDLコレステロールの値を9.3%低下させました。

しかし、アルツハイマー病、血管性認知症、あらゆるタイプの認知症、およびパーキンソン病は、年齢、性別および出生年で補正した後、LDLコレステロール低値と関わる遺伝子変異の数とは統計学的に有意な関連を示しませんでした。

コレステロールを下げると認知症になりにくいのか

高LDLコレステロール血症が認知機能障害のリスクを上昇させることはこれまでにも報告があります。しかし、LDLコレステロール値に関わる遺伝子バリアントが直接的に神経変性疾患の発症と関連があるかということについては大規模なデータが不足していました。

今回は総合的な結果として有意に関連するものではないという結果が示されており、やや意外な結果です。もしかすると、LDLコレステロール値が高くなりやすい遺伝子バリアントを持っていても、適切に治療介入を行うことで、病気の発症というエンドポイントについては統計学的に有意な結果にならないということかもしれません。今後、前向き研究が発表されることによって異なる結果が得られる可能性もあるでしょう。さらなる研究結果が待たれるところです。

今回の記事でご紹介した論文
Benn M et al. Low LDL cholesterol, PCSK9 and HMGCR genetic variation, and risk of Alzheimer’s disease and Parkinson’s disease: Mendelian randomisation study. BMJ 2017 Apr 24; 357:j1648.